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- 熱中症リスクは“帰宅して夕飯を食べきるまで”消えない!? スポーツ生理学者が自身の救急搬送体験から訴える対策とは?
早くも猛暑日が続き、メディアでも熱中症対策を盛んに呼びかけています。リスクを侮らず、十分な対策を心がけているという人も多いと思いますが、それでもリスクをゼロにはできません。スポーツ生理学の専門家が自身の救急搬送体験ととるべき対策を語ります。
ソファーに横になって夕飯までの時間を過ごそうとしたら…
早くも各地で猛暑日を記録しています。多くの人は十分な水分補給などの熱中症対策をとって毎日過ごしていることと思います。ところが、それでも熱中症にかかってしまうケースが少なくありません。自分なりに気をつけているつもりでも、その日の体調や気候やタイミングによって発症することもあり、最大限の注意が必要です。

「2年前のことですが、実は私も熱中症になってしまったんです」。そう明かすのは、聖マリアンナ医科大学・スポーツ生理学研究員の吉原紳さんです。吉原さんは、ゴルフ場を貸し切る大規模なものから少人数のものまで、数えきれないほど救命救急講習会を開催してきたスポーツ生理学の専門家であり、『ゴルフ 一番危険なスポーツ』を出版したシングルハンディゴルファーでもあります。ご自身の苦い経験が多くの人の役に立つなら……と、熱中症で倒れた経緯とその怖さについて話してくださいました。
「私はウォーキングを日課にしています。その日の夕方は1時間ほど歩いて休憩、40分くらい歩いて休憩、約30分かけて帰宅するいつものコースを歩きました。休憩場所もいつもの公園です。水を飲み、顔を洗い、ベンチに腰かけて一息ついたら再スタート。休憩を入れて2時間強、ゴルフの9ホールより少し長いくらいです。もともと体力には自信を持っていますし、公園の水を飲んで水分補給もしていましたし、家に帰るまで何ともありませんでした」
「しかし、今振り返ると、本格的な夏になる前、暑くなり始めの頃だったため、暑熱順化がまだできていなかったのです。汗をかきにくい、汗をかいても気づきにくい。そのため水分補給が後手後手になってしまったと思います。最初からスポーツドリンクを少しずつ飲んでウォーキングするべきでしたが、1時間歩いて水を飲んだ時にはすでに脱水が始まっていたのでしょう」
とはいえ自覚はなく、2度の休憩と水分補給をして、いつもと同じように家に着いたのですが……。
「帰宅後、すぐシャワーを浴びました。ただ、自覚はありませんでしたが、脱水状態は改善されていなかったのだと思います。せめて椅子に腰かけ、経口補水液かスポーツドリンクを飲み、休憩してからシャワーを浴びていればその後の経過は違ったかもしれません」
「浴室を出て体も気分もさっぱり。清涼飲料水を少し飲み、ソファーに横になって夕飯までの時間を過ごそうとしたら、10分くらいして異変が起きました。けいれんが始まったのです。片足がつり、両足がつり、あっという間に全身に及び、体中ものすごい痛みでどうしようもない。尋常ではない痛みに体を丸めながら『まさか、これは脱水か!?』と思い、家族に救急車を呼んでもらいました」
「間もなく意識がもうろうとし始めました。覚えているのは救急隊員が来たところまでで、意識が戻ったときは病院のベッドの上。医師から『脱水です』と告げられたのです。私の場合は、点滴を受けて2時間くらいすると回復してきて体がラクになって帰宅することができました」。そう吉原さんは振り返ります。
倒れてすぐ治療を受けることができたのは不幸中の幸いでしたが、運動が終わりゆっくり過ごしていたところで体調が急変したのが気になります。
「そこが熱中症の怖いところだとあらためて実感しました。どちらかというとベテランゴルファーやシニアの方に多いのですが、プレー中は元気でも、知らない間に脱水が進み、それが改善されていない場合があるからです。だとしても運動後、脱水しているかどうか自分では分かりません」
「その状態でお風呂に入ってひと汗流したり、レストランでビールを飲んだりしたためさらに脱水して、クラブハウスで倒れてしまう方は少なくないでしょう。アルコールは飲まなくても、コーヒーやお茶を飲んで帰途についたところ運転中にアクセルやブレーキを踏む足が上がらなくなったり気分が悪くなったりするケースもあります。また、自宅に着いて夕飯までテレビを見て過ごしているようなときも要注意です」
「私の場合は、けいれん、意識消失が起き予断を許さない状況でしたが、人によっては、めまい、言語障害、物をつかめず落としてしまう、足が上がらないなど『ちょっとおかしいな』くらいの症状もあります。しかし、プレー後は最後まで気を緩めず、些細な症状でもキャッチして、何かあれば無理をせず早目に適切な対応をとることが重要です。“最後まで”というのは、食事を終えるまでです。特にシニアは、帰宅後、ホッとしている食事前が最も危険です。普通の食事を普通にとれれば胃腸が動いて循環がよくなり、体調は安定するでしょう」
軽度の脱水を改善するとされる経口補水液のペットボトルを携行
プレー後にあらわれる熱中症を防ぐにはどうしたらいいのでしょうか。
「プレー後に症状が出る場合でも、脱水はプレー中から始まり、そして進んでいます。ですから、私が失敗したときのように自分の健康や体力を過信したり油断したりせず、熱中症対策をとることが重要です。睡眠不足や体調が万全でない時は無理をしない、休憩をとる、できるだけ涼を取ったり体を冷やしたりすることは言うまでもありません」
「そのうえで十分な水分補給を行いましょう。ただし、それには飲み方がポイント。9ホールで1リットル飲めばOKとかいうものではありませんし、喉が乾いてから飲んでも遅いので、スタート前から早めに少しずつ水分補給をしていくことが重要です。また、お茶やコーヒーは利尿作用があるので水分補給に適しません。シニアで『水が一番』といって水をガブ飲みする方がいますが、水を大量に飲んでも血液が薄まるだけで熱中症の予防にはならないのです」
では何を飲むといいのでしょうか。
「汗とともに失われた成分を補う電解質(編集部注:体内の水分バランス、神経伝達、筋肉の動きなどさまざまな生理機能に関与する、生命維持に不可欠なミネラル)をバランスよく含むスポーツドリンクがお勧めです。たまに、スポーツドリンクが甘いといって薄めて飲んでいる方を見かけますが、薄めるより甘みを抑えた好みのドリンクを飲むほうがいいと思います。もちろん糖尿病など既往症がある方は医師の指導に従ってください」
「また、ラウンド中はしだいに足が重くなったりして疲れてきます。しかし、実は、筋肉だけでなく内臓も疲れてきて脱水が進むのです。そこで、必ず軽度の脱水を改善するとされる経口補水液のペットボトルを携行して、後半9ホールや終盤にかけて飲むようにするのがベターです。私も熱中症を経験して以降、ウォーキングのときでも経口補水液のゼリータイプを持ち、補給しながら歩いています」
吉原さんはご自身の苦い経験を通して、水分補給は喉が乾く前から少しずつ十分に、ラウンド後半から終盤は経口補水液を併用することを勧めます。
ラウンド後にシャワーを浴び、レストランでより美味しくビールを飲むために終盤のプレーではドリンクを控えるなど、もってのほか。昨今の猛暑では、家に帰るまで……いえ、「家に帰って夕飯を食べ終わるまでがゴルフ」といえそうです。プレー後の体調悪化に気をつけて過ごしましょう。
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