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- 「打ってください」は安全宣言じゃない! ゴルフカートナビの音声案内に潜む落とし穴
カートナビから流れる「前組が250ヤード地点を通過しました」という音声案内。多くのゴルファーがティーショットの合図として利用しているが、その数字をそのまま信じて大丈夫なのだろうか。打ち込み事故を防ぐために知っておきたい“安全距離”の考え方を聞きました。
カートナビの音声案内は目安に過ぎない
昨今のゴルフ場はセルフプレーが一般的になり、コース内の案内はカートナビが担うようになりました。
ティーイングエリアで前の組が進むのを待っていると、「前の組のカートが250ヤード地点を通過しました。安全を確認してティーショットをお打ちください」といった音声ガイダンスが流れます。この案内を一つの目安として、ティーショットを打つタイミングを判断している人も多いのではないでしょうか。
ただ、この「250ヤード」という数字を、そのまま安全ラインとして受け取っていいのかと考えると、少し引っかかるところがあります。
たとえばティーショットが240ヤードから250ヤードくらい飛ぶ人であれば、前の組のカートが260ヤード地点に止まっている状況では、まだ打てません。カート道に当たって大きく跳ねることもありますし、風や傾斜の影響で飛距離が伸びることもあります。

では実際のところ、前の組のカートとどのくらい離れていれば安全なのでしょうか。ゴルフ場関係者に聞いてみました。
「基本的には『ご自身の飛距離を参考に判断してください』ということですよね。ティーショットの飛距離が200ヤードの人もいれば、280ヤード飛ばす人もいるわけですから、個人の判断になります」
つまり、カートナビの案内は絶対的な基準ではなく、あくまでひとつの目安に過ぎないという位置づけです。実際、プレーヤーの飛距離には大きな個人差があり、一律の安全距離を設定するのは難しいという現実があります。
そもそも、カートナビの案内自体が、「この地点を通過したら打っていい」という“設定”に基づいています。たとえばブラインドホールで打ち下ろしのレイアウトになっている場合は、250ヤードではなく300ヤード近くまで進まないと案内が出ないこともあります。つまり、コースの形状や設計によって基準は変わっており、どのホールでも同じ距離が安全とは限らないということです。
打ち込みトラブルにゴルフ場は基本的に関与しない
では、前の組とどこまで近づいたら「打ち込み」と判断されるのでしょうか。この点についても、明確な距離基準はないようです。
「うちのゴルフ場は『何ヤード以内なら打ち込み』という定義はないですね。一般的には、前の組の方がビックリするくらいの気づき方をされたら、打ち込みという判断になるかなと思います」
ただ、この“ビックリするかどうか”という基準も、人によって感じ方が異なります。ある人にとっては問題ない距離でも、別の人にとっては危険と感じる場合があります。実際に「打ち込まれた」というトラブルは少なくないようです。
こうしたトラブルが起きた場合、ゴルフ場はどこまで関与するのでしょうか。
「ゴルフ場は関与しないですね。お客さん同士の問題として扱います。ただ、あまりにもひどいときは、注意することもあります。『前の組の頭上を越えていった』とか、そういうケースですね」
マスター室に連絡が入ることはあっても、その場に立ち会って状況を確認することは難しく、どちらが悪いかを判断することはできません。そのため、よほど悪質なケースでなければ、注意喚起にとどまることが多いといいます。
ここで気をつけたいのが、ビギナーのプレーです。ゴルフを始めたばかりの人は、自分の飛距離を正確に把握していなかったり、「どうせ当たらないだろう」と過小評価してしまったりすることがあります。
また、後続組に追いつかれたくないという心理から、早く打ちたいという気持ちが先に立つこともあります。その結果、十分な間隔を取らないままティーショットを打ってしまうケースも見られます。
しかし、打ち込みはスロープレーよりも重大な問題になります。ボールが当たればケガにつながる可能性がありますし、たとえ当たらなくても、大きな不安や不快感を与えてしまいます。カートナビの案内があることで、機械の判断に頼ってしまいがちですが、最終的な判断はプレーヤー自身に委ねられています。
カートナビの「打ってください」という案内は、許可というよりも“参考情報”に近いものです。その数字をそのまま受け取るのではなく、自分の飛距離やコースの状況を踏まえ、「本当に届かないかどうか」を考える必要があります。
安全な距離は一律の数字で決まるものではなく、状況によって変わります。「どうせ届かないだろう」ではなく、「絶対に届かない」と言い切れるかどうか。一度立ち止まって冷静に判断することが、結果的に安全でスムーズなプレーにつながります。
文・保井友秀(やすい・ともひで)
1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーライターとしての活動を開始。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。現在はゴルフ雑誌やウェブサイトなどで記事を執筆している。
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