昨年は約1500組が5人プレーを楽しんだ
1組5人でプレーするのが当たり前というゴルフ場があるのをご存じでしょうか。

「え、ウソでしょ? だってカートにキャディーバッグ4本しか積めないじゃん。スコアカードだって、普通4人分しか書くとこないでしょ?」
これ、筆者のゴルフ仲間に、冒頭の質問をした時の反応です。この記事をお読みになった方の多くが、同じ思いを抱かれたのではないかと推察します。
でも、それが、あるんです。千葉県市原市の、千葉よみうりカントリークラブです。1996年から導入されていると言いますから、今年で25年目。すっかり定着していて、昨年は約1500組、約7500人ものゴルファーが、5人でのプレーを体験したことになります。
千葉よみうりの年間組数が約1万3500組ですから、1割を優に超えていますし、リピーターも多いとか。一体、どんなメリットがあるのでしょうか。同コースの総支配人・枝川五輪男さんが解説してくれました。
「例えば、女性の5人組の方々。レンタルクラブを直接ゴルフ場に送られて、車1台で来られます。ウチなら5人で来ても、2人と3人に分かれてラウンドすることにはなりません。5人用のカートに仲良し5人組が乗り込んで、楽しくプレーされています」
単純に、気の合う仲間なら1人でも多いほうが楽しさも増すというもの。大きめのSUVやワゴンなどでバッグが5本積めれば、当然1人当たりのガソリン代も、高速代の負担も安くなりますから、お財布に優しいのもメリットでしょう。
一度でもゴルフをプレーしたことのある方なら、ゴルフは多くても1組4人という概念はご存じだと思います。ゴルフ場備え付けのスコアカードも、乗用カートのキャディーバッグを置くスペースも、乗用カートに備え付けのナビのスコア入力スペースも、4人用であるのが当たり前です。
今年の東京オリンピックの男子ゴルフ競技でも、3位に松山英樹選手ら7人が並びプレーオフに突入。前の組が4人、後ろの組が3人に分かれて行われ、C.T.パン選手が銅メダルを獲得したシーンをご記憶の方も多いと思います。
ティーオフの打順を決めるくじも自作

しかし、5人以上が1組で回ってはダメ、とゴルフルールでうたっているわけではありません。過去にプロゴルフのトーナメントでは、5人のプレーオフを1組で行ったこともあります。「海外のリゾートコースに行けば、1組で5人や6人が一緒に回っているケースもたくさんあります」(海外のゴルフ場事情に詳しい関係者)
そのため千葉よみうりCCも、電磁誘導の5人乗りカートを導入した際に、5人1組のセルフプレーの導入を決断。カート後方のバッグを置く場所を、4本用から5本用に改造しました。
「予約のシステム、スコアカード、カートナビも5人用に変更した時に初期コストはかかりましたが、ランニングコストはそうでもありません。結構手間がかかったのは、スタートを決める金属のくじ(棒)。1本から4本の線が入っていますが、5本のものは売っていませんので、4本のものを追加購入して、溝を1本加えました」(枝川総支配人)
とはいえ、そんな努力を大きく上回るメリットが「5人1組」には隠されていました。
「土日は混みますから、コンペの組数を増やすことは不可能でした。でも5人であれば、4組で16人のところ、20人まで増やせます。つまり1組増やしたのと同じになります」(枝川総支配人)
ゴルファーたちにも好評で、コース側にも売り上げ増をもたらしたのだから、まさに“ウイン・ウイン”の5人セルフ導入となったわけです。
前の組に大きく遅れたら2組に分けられる
ただ、不思議なのは、千葉よみうりCCでこれだけ成功している5人セルフが、他のコースに普及しないこと。その裏事情を、枝川総支配人はこう解説してくれた。
「それはやはり、ウチのゴルフ場がパブリックだからだと思います。会員制のゴルフ場だと、5人プレーは遅いという先入観から、反対意見が出るでしょう。スタート前に『ちゃんと前の組について行ってくださいね』とお声がけするだけで、たいていのお客様は前の組から遅れることはないのですが」
ただ、ごくまれに、前の組から大きく遅れてしまうケースもあるとか。改善されない場合には、2人の組と、3人の組に分けられてしまいます。スロープレーはみんなの敵。そこは仕方ありませんね。しかし実際には5人1組が4人1組よりプレーが遅いケースは、ほとんどないとのことでした。
また、関取衆のコンペが行われた際は、さすがに5人の同乗は重量オーバーとなってしまうため、こちらは2台に分かれてもらったそうです。
いずれにせよ、5人プレーが一定の支持を集め、すでに25年も続いていることは確か。その楽しさを確かめるために、一度5人セルフを試してみる価値は、ありそうです。