「歴史をつくりたい」とはいうもののプレー中はあくまでマイペース
3週連続優勝。日本の女子ツアーで、これまで2人しか達成したことのない偉業に向けて、岩井明愛が首位発進だ。
舞台は第56回日本女子オープン。芦原GC海コース(福井県)で28日に行われた初日を、ボギーフリーの5アンダーで回って首位タイに立った。

住友生命Vitalityレディス 東海クラシックでツアー2勝目を挙げると、翌週のミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンでも優勝。昨年、NEC軽井沢72とCAT Ladiesで2週連続優勝を飾った双子の妹、千怜の向こうを張るような活躍で、今、ツアーで一番ホットな選手になっている。
3週連続優勝がかかるのが、公式戦・日本女子オープンというタイミングだが、本人は“通常運転”で臨んでいる。「歴史をつくりたい」と言ってはいるものの「試合中はそんなこと考えてないので、結果は気にせず自分のプレーに集中できたらいいなと思います」と、淡々としたものだ。
好調さの裏にあるのは、「自分の思うようなプレーができている」ということ。具体的には「1打1打、風だったりクラブの番手選びだったりで、ジャッジがしっかりできているのと、自分がどういう球を打ちたいという時に、その球が打てているという感じです」と胸を張る。
3週連続優勝が懸かるのはもちろんだが、それとは別に3アンダー10位と、こちらも好位置につけた妹・千怜との優勝争いという夢も広がる。「そうですね。いつかは(公式戦でも一緒に)回ってみたいですね」との言葉からも気持ちは伝わってくる。
5月のRKB×三井松島レディスでは、千怜、山下美夢有と3人でプレーオフを戦うという最高の場面があった。この時の優勝は千怜だったが、ナショナルオープンの大舞台での直接対決が見られるかもしれない。
アマチュアだった2020年大会で14位タイに入り、ローアマタイトルを獲得した時には、「密かに優勝を狙っていたので悔しい」というコメントを残している。今になって振り返ると、「優勝したのが原(英莉花)さんで、表彰式で横にいるのがうれしかった。前は優勝、優勝という気持ちだったんですけど、今は全然意識していません。1日、1日、やれることをやるだけです」と考え方が変わった。
勝利に対しての強烈な意識を持たなくなったのは、今年のKTT杯バンテリンレディスで初優勝した後のこと。6月のアースモンダミンカップのプレーオフで申ジエに敗れ、2週連続2位となった後で、そう考えるようになったと言う。
それが最高の形でプレーに反映されているのが、ここ2週間の勝利なのだろう。プロなら誰でも強く持っていて当たり前の優勝したい気持ちを、前面に出すことなく目の前に集中する。重圧のかかる場面では難しいそれを、大舞台でもやり遂げることができるのか。勝負の行方だけでなく「岩井明愛の今」が試される。
岩井 明愛(いわい・あきえ)
2002年7月5日生まれ、埼玉県出身。双子の妹・千怜(ちさと)とともに、高校ゴルフの名門・埼玉栄高のダブルエースとして活躍。同校を8年ぶりの全国高等学校ゴルフ選手権・団体戦優勝に導いた。21年にプロテスト合格。JLPGAツアーに本格参戦した22年はメルセデス・ランキング40位でシード獲得。23年「KKT杯バンテリンレディスオープン」で待望の初優勝を果たし、住友生命Vitalityレディス 東海クラシック」「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」で2週連続優勝を果たす。Honda所属。