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- 全米女子アマ制覇の馬場咲希に学ぶ“パットの距離感”「ボールを見ながらボールを見ない!?」
多くの男女ツアープロのコーチを務め、ゴルフ中継で解説も務めている石井忍が、国内外ツアーで気になった選手やシーンをピックアップ。独自の視点で分析する。今回注目したのは、「全米女子アマ」で優勝した馬場咲希だ。
会場は高低差がある難コース、セオリーが通用しない
日本のメディアでも大きく取り上げられているのでご存じの方も多いと思いますが、17歳の馬場咲希選手(日本ウェルネス高)が「全米女子アマチュア」で優勝しました。女子アマチュアゴルフでは世界最高峰の大会で、日本勢としては1985年の服部道子さん以来となる2人目の快挙です。
戦いの舞台だったワシントン州のチェンバーズベイGCは、ジョーダン・スピース選手が優勝した2015年の「全米オープン選手権」を開催したコース。この大会で私は、薗田峻輔選手のコーチ兼キャディーとして現地を訪れていたのですが、非常にタフなコースだったことを覚えています。
高低差が30メートル以上あるリンクスコースでフェアウェイやグリーンには強いアンジュレーションがあり、「手前から攻める」というセオリーが通用しません。時にはグリーン横や奥にキャリーさせて転がして寄せるなど、戦略にはイマジネーションが求められます。
また、その頃ははフェアウェイもグリーンもフェスキュー芝を採用しており、どこからがグリーンなのか、芝を見ただけでは分からない状態でした。そのため、1~2メートル間隔で白い点が打たれ、グリーンとフェアウェイの境界線が示されていました。
グリーンは暑さと乾燥で芝が痛み、転がりが一定でなかったことなどもあって、当時はコースを酷評する選手もいたほどでした。
そんなチェンバーズベイですが、この「全米オープン選手権」後にポアナ芝とベント芝に張り替えたそうで、今回の「全米女子アマチュア」は、青々とした芝で、グリーンの転がりもスムーズに見えました。
全米女子アマを制した要因のひとつは「ミドルパットの巧みさ」
さて、馬場選手の話に戻しましょう。彼女の魅力といえば、175センチの長身から繰り出される270ヤードのドライバーショットです。しかし、今大会では飛距離だけでなく、ショートゲーム、特にミドルパットの巧さも光っていました。
印象的だったのは、ストローク直前の動作です。アドレス位置に立ってグリップを決めた後、彼女はチラッ、チラッとターゲット方向に何度か目をやります。そして、視線を下に戻してすぐにパッティングを始めていたのです。
パッティングは、ボールを見ながらストロークするのが一般的です。ですが、ボールを凝視していると、カップやラインに対する意識が薄れ、パンチが入ったり、インパクトで緩んだりと、距離感や方向性が合わなくなります。
馬場選手は、ターゲットを何度か確認し、その景色が頭の中に鮮明に残っているうちにストロークを開始していたわけです。
視線はボールでも、意識はターゲットへ。この感覚でパッティングをすると、スムーズにヘッドが動いてタッチが合いやすくなりますよ。
馬場咲希(ばば・さき)
2005年4月25日生まれ、東京都出身。父親の影響で5歳からゴルフを始める。東京都ジュニアゴルフ選手権(18年)、関東ジュニアゴルフ選手権(19年)、東京都女子アマチュアゴルフ選手権(21年)などで優勝。175センチの長身で、270ヤードのドライバー飛距離が武器。今年は全米女子オープンに予選会を経て出場し、決勝ラウンドに進んで49位。8月の全米女子アマでは、日本勢として85年の服部道子以来、37年ぶりとなる快挙を成し遂げた。日本ウェルネス高等学校在学中。
石井 忍(いしい・しのぶ)
1974年生まれ、千葉県出身。日本大学ゴルフ部を経て1998年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くの男女ツアープロを指導。「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアにもレッスンを行う。
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