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PGAツアー改革は「僕のおかげ」と頷くミケルソンの自己満足が残念すぎる
PGAツアーが新シーズンから導入する新制度は、特に金銭面で選手に大きなメリットがあるが、結局リブゴルフと同じ土俵で張り合っているだけではないかとの批判も根強い。そんな中、あの男の発言に注目が集まっている。
PGAツアーもリブゴルフも批判して物議を醸す
フィル・ミケルソンの「あの発言」が問題視され、ほぼすべてのスポンサー企業が彼から次々に離れていった今年2月ごろのあの騒動が、昨今では、すでに昔話のように忘れ去られつつある。
![リブゴルフに移籍後もその人気者ぶりは相変わらずのフィル・ミケルソン 写真:Getty Images](/wp-content/uploads/2022/09/philmickelson_2022livboston_GettyImages-1420772075-2.jpg)
「あの発言」とは、ミケルソンが昨秋に受けたあるインタビューの際に口にした言葉の数々だ。
PGAツアーのことを「欲深い人々」と批判し、当時は創設に向けて準備段階にあったリブゴルフのことを「恐ろしい人々」と表現したミケルソンは、自分がリブゴルフ創設に協力的な姿勢を取っている理由は「リブゴルフとの競争関係ができることで、これまで独占状態にあったPGAツアーが自らの問題点に気づき、改革の必要性を感じるからだ」と言った。
その発言は、あたかもミケルソンがPGAツアーを向上させるためにリブゴルフを利用したようにも受け取れ、実際、「それがリブゴルフ側の反感を買った」という話も聞こえていた。
しかし、だからといってミケルソンがリブゴルフから拒絶されたわけではまったくなく、それどころか、彼は推定200億円と言われる契約金を受け取り、リブゴルフと複数年契約を交わした。
そんなミケルソンに続くかのように、ダスティン・ジョンソンやセルジオ・ガルシアらもリブゴルフへの移籍を決め、そして今年6月、リブゴルフ初戦がロンドン郊外で開催された。
以後、PGAツアーとリブゴルフの確執は激化の一途となっているのだが、ミケルソンの「あの発言」騒動から半年以上が経過した今、ミケルソンは、すこぶるご満悦の様子だ。
とはいえ、彼がご満悦なのは、ビッグマネーを手に入れたことばかりではないらしい。米スポーツイラストレイテッド誌のインタビューに応じたミケルソンは、「PGAツアーは1年前とは大きく変わった。今、誰もが以前よりベター・ポジションにある」と、納得顔で頷いているという。
「PGAツアーの仲間たちからも感謝されている」
ミケルソンは何にどう納得しているのかと言えば、まず第一に、PGAツアーの選手たちが危機感を抱き、自分たちの立場とPGAツアーをより良いものとするための努力をしなければいけない、団結していかなければいけないという意識が生まれ、実際、そのためのアクションが見られたことに「かくあるべし」と頷いている。
昨季のプレーオフ第2戦、BMW選手権の開幕前、タイガー・ウッズがプライベートジェットを飛ばしてフロリダの自宅から試合会場のデラウエアまで駆けつけ、ローリー・マキロイらとともに選手オンリーの緊急会議を開いたことは、その何よりの証だとミケルソンは評価している。
「タイガーが飛んできて、ローリーらとミーティング。そんなことは過去にはただの一度も起こらなかった。決して見られなかった出来事だ」
リブゴルフが創設され、トッププレーヤーたちが次々に移籍してしまったからこそ、ウッズやマキロイを筆頭とする選手たちの意識改革が生まれたのだから「それは、リブゴルフのおかげだ」というのが、ミケルソンの指摘であり、彼の頷きの理由でもある。
だが、それ以上にミケルソンが大きく頷いているのは、ウッズらが緊急会議を開いた翌週にPGAツアーのジェイ・モナハン会長から発表された新シーズンへ向けての大改革の内容だ。
今年2月の発言でミケルソンが口にした「PGAツアーは欲深い人々」というフレーズには、「PGAツアーはテレビ放映権料などにより莫大な収益を得ているのに、僕たちプレーヤーにはそれが正当に還元されていない」という意味が含まれていた。
「僕はPGAツアーの(元会長の)ティム・フィンチェムにも(現会長の)ジェイ・モナハンにも、僕たちにきちんと還元してほしいと、長年、言い続けてきた。トッププレーヤーが受け取るべきものを受け取れるようにしてほしいと言い続けてきた」
だが、リブゴルフが創設され、破格の契約金をオファーし、PGAツアーより高額の賞金を授けるアナザー・ワールドが出現すると、そんなリブゴルフへの対抗策としてPGAツアーは大改革を敢行することを決めた。
リブゴルフと同等の賞金総額2000万ドル級の大会を年間20試合(メジャー4大会を含む)揃え、“トッププレーヤー”20名に、その20試合への出場を義務づけるという新たな施策は、言い方を変えれば、「トッププレーヤーには、ビッグマネーを稼ぐチャンスを年間20回、取り揃えます」という宣言のようなものだ。
それを聞いたミケルソンは、「PGAツアーの巨額の収益が、やっとトッププレーヤーに少しだけ還元されることになった。みんなが以前よりいいポジションに付いた。PGAツアーの仲間たちからもリブゴルフの仲間たちからも感謝されている」と語ったそうだ。
ミケルソンの主張で実現したのは“マネー”だけ
しかし、それでもなおミケルソンはPGAツアーに対する大きな不満を露わにしている。
そう、リブゴルフに移籍する以前から、ミケルソンは「メディア・ライト(権利)」あるいは「デジタル・ライト」をPGAツアーが独占的に有していることを激しく批判していた。
「PGAツアーは僕ら選手の1打1打によって莫大な利益を得ている。だが、僕ら選手には、自分の1打1打だというのに、それによって1セントもお金が入らない」
たとえば、ウッズとミケルソンの「世紀の一騎打ち」として大きな注目を集めた「ザ・マッチ」では、ミケルソンが独自の撮影クルーを現場に入れて独自の映像を作ろうとしたところ、PGAツアーから「メディア・ライト(放映権料)」を請求されたそうで、「僕の1打1打を撮影するのに、僕がPGAツアーからお金を請求されるだなんて、そんなバカな話があっていいはずがない」と激怒。
ザ・マッチの話は一例にすぎず、ウェブやSNSでも、デジタル・ライトを有するPGAツアーは「僕らの1打1打によって大きな収益を得ているのに、僕らにはそれが還元されない」。
その不満が高じて「欲深い人々」という言葉が昨秋のミケルソンの口から飛び出したのだが、先日発表されたPGAツアーの大改革の中に、メディア・ライトやデジタル・ライトに関するものは見られなかった。
「そもそも僕がPGAツアーに求めてきたものは、マネー、メディア・ライト、透明性の3つだ」
ミケルソンの長年の主張と努力がようやく実って、PGAツアーが「マネー」部分を見直し、トッププレーヤーたちにビッグマネーを還元することを決めたのだとすれば、ミケルソンがご満悦の表情で頷くのも無理はない。
だが、その一方で、彼が移籍したリブゴルフには、その三拍子が揃っているのかと言えば、「マネー」こそあるが、それがどんなマネーであるかが批判されている。メディア・ライトに関しては交渉の余地はありそうにも見えるが、「透明性」があるとは言い難い。
いやいや、「透明性」どころか、不透明な決め事が突発的に出現する「びっくり箱」みたいな状態で、次は何が飛び出すだろうかと心配にさえなる。
そして、リブゴルフの選手となったミケルソンが、PGAツアーの今回の大改革は「どうだ、僕が言った通りだろう? 僕のおかげ、リブゴルフのおかげだ」と頷いたところで、それはもはや彼の自己満足、自己顕示にすぎない。
いや、それほどの力があることを、そもそもミケルソンが自認していたのなら、今回のような大改革を決定・実施するところまで「PGAツアー選手として、アナタにやり遂げてほしかった」と思えば思うほど、彼の移籍が残念でならない。
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