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仙台のゴルフ場では稼働6年でソーラー火災 発生3カ月いまだ原因不明 土砂崩れや水質汚染の心配も/シリーズ『ゴルフ場減少時代』
大きな反響があった記事「自治体から9500万円で買い戻したゴルフ場を即日4億円でソーラー事業者に転売 宮城の小さな町襲う異常事態の現場へ」から始まるシリーズの3回目。団結し白紙撤回を求める加美町(宮城県)住民たちの生の声を日本ゴルフジャーナリスト協会会長の小川朗氏が現地取材しました。
メガソーラー火災への不安
意見書の2番目に挙げられた火災への懸念も深刻です。4月15日に同じ宮城県内で起きた西仙台カントリークラブにおけるメガソーラー施設の火災も、加美町の住民に大きな不安を与えました。この施設は西仙台CCの27ホールのうち、9ホールが転用された「西仙台メガソーラー太陽光発電所」で、稼働からわずか6年で火災を起こしています。3カ月を経過した現時点でも原因は不明であることも、不安を増大させる要因になっています。

【住民の声】
「自慢の故郷の山に、町民に何の説明もなくソーラーができることを聞き悲しいです。ソーラーの火災事故(仙台)が発生。不安だらけです。絶対反対」
「消火困難なメガソーラー、火災の発生、パネルの劣化・破損による有害物質による、水質環境汚染の観点から建設には反対」
「火災・災害が心配」
「自然破壊による大災害、火災、動植物への影響が危惧されるため大反対」
「山火事になったら心配」
野生動物の生態系、文化遺産への影響の懸念
イヌワシ、クマタカなど希少猛禽類への影響、生態系に関わる調査が不十分であるとの指摘はこの意見書でも数多く挙がっていました。またこの周辺が縄文時代の遺跡が発見されているだけに、ソーラーパネルがそれを覆いつくしてしまうことに対する抵抗感もかなり根強くあります。
【住民の声】
「貴社の太陽光発電事業予定地につきましては、数多くの遺跡が埋蔵されており、さらに多くの遺跡が出土するものと考えられます。また、希少猛禽類が生息している。貴社が事業を進めることにより、猛禽類の地域的絶滅につながることもあります。事業の見直しをしていただきますようお願いします」
「自然環境保全の見地から太陽光発電事業に反対。加美町のシンボルである薬莱山の景観悪化、保水力低下、土砂災害、火災、部品等の窃盗等心配。動植物についての説明は浅く、不十分です」
※ ※ ※
こうした意見は「『CS宮城やくらい太陽光発電事業に係る環境影響評価準備書』意見書」にまとめられ、令和6年5月27日にカナディアン・ソーラー・プロジェクト(株)に送られました。その中には少数ながら「すでにゴルフ場として開発している土地に作るのであれば自然への影響は少ない」といった賛成意見も含まれてはいました。
しかし、そうした賛成意見にも「火災時の対策をしてもらえれば」の条件が付けられています。4月に起きた西仙台CCは3カ月を経過した今も原因不明のままで対策も十分ではないだけに、周辺の住民から不信感が払しょくされるのは難しそうです。
すでに太陽光発電事業の白紙撤回を求める署名は約3000に達し、8月1日に町長と町議会議長に提出、2日に宮城県庁にコピーを提出することが決まっています。反対運動は各団体と連携しながら、今後さらにヒートアップしていくことになりそうです。
実はこうした動きは宮城県内にとどまらず、全国各地で起こっています。次回は火災だけではない深刻な問題に直面している施設の実態に迫ります。
取材・文/小川朗
日本ゴルフジャーナリスト協会会長。東京スポーツ新聞社「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女メジャーなど通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後独立。東京運動記者クラブ会友。新聞、雑誌、ネットメディアに幅広く寄稿。(一社)終活カウンセラー協会の終活認定講師、終活ジャーナリストとしての顔も持つ。日本自殺予防学会会員。(株)清流舎代表取締役。
◆加美町役場関係者の証言を基にした事件の経過◆
・1995(平成7)年に「やくらいゴルフ倶楽部」が営業開始。
・2008(平成20)年に積水化学工業(株)の子会社(株)SHR仙台が事業から撤退。(株)ダヴィンチ・リアルティに事業を譲渡。
・2010(平成22)年に(株)ダヴィンチ・リアルティが撤退し株式会社「やくらいゴルフ倶楽部」へと経営を移管。
・2013(平成25)年に「やくらいゴルフ倶楽部」が経営不振を理由に土地の買い取りを町に打診。町は経営が改善したら同額で買い戻す覚書を取り交わし9500万円で買い取り。
・2017(平成29)年4月1日に町から土地を貸借して運営していた「やくらいゴルフ倶楽部」と「(株)チームトレイン」が合併。その後「やくらいゴルフ倶楽部」が解散。「(株)チームトレイン」が事業を継承。
・2019(平成31)年、「(株)チームトレイン」から土地買い戻しの申し入れ。町役場だけでは決められない案件のため議会に内容を説明し、代表者との面談などを行う。
・2021年の4月23日に臨時議会を開催し、同意が得られたため本契約。
・その上で「(株)チームトレイン」に土地を売却。
・「(株)チームトレイン」は同日、太陽光事業「カナディアン・ソーラー」(カナダ)の子会社「ティーダ・パワー110合同会社」と土地・建物を4億円で売却する契約を結んでいた(のちに発覚)。
・2024年7月8日、宮城県加美町議会が石山敬貴町長にメガソーラー計画に反対する決議文を提出。
・これを受けて同日、石山敬貴町長が町役場で記者会見。土地の所有権の返還を求めるなどの法的措置を検討しており、刑事告訴に関しても宮城県警加美警察署に相談していることを明かした。
※売却の過程で(株)チームトレインは「ゴルフ場を経営するために土地を買い戻す。融資を受けるのに担保となる土地が必要」と説明。「ゴルフ場を継続していくために必要な土地の売買契約である」という言葉を信用し(株)チームトレインへの土地の売り戻しが議会で承認され、町側は同額の9500万円で売り戻した。ところがその日の内に、土地は太陽光事業者に転売されていたことが後日発覚した。
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