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秒読み「2025年問題」は税収減に直結! 市内33コース・利用者176万人・利用税約10億円“ゴルフのまち”の生き残り策とは?
日本で人口の最も多いグループを構成する約800万人の「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者となる2025年まで3週間を切りました。その煽りをモロに受けそうなのが市内に33コースを抱える“ゴルフのまち”千葉県市原市。待ったなしで取り組む対策を現地取材しました。
「クラス31人のうち10人がゴルフをやりたいと」
「2025年問題」と密接に関わる少子高齢化対策のサンプルとなりうるのが「ゴルフの聖地」を目指す千葉県市原市の取り組みです。11月27日、千葉女子プロゴルフ会の8人が小学5年生たちに朝から給食まで、直接指導。「ゴルフの聖地」を目指す市と教育委員会、女子プロゴルファー、学校が連携する現場に密着しました。
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問題の「2025年」が目前に迫る晩秋の水曜日。暖かい日差しが降り注ぐ市原市立「ちはら台公園」の多目的広場では、あちこちから小学生の歓声が上がっていました。
グラウンドに散らばった市原市立牧園小5年生たちの手に握られていたのは「スナッグゴルフ」と呼ばれるゴルフの入門用具。クラブはプラスチック製で、ボールはテニスボールより少し小さく、ピンフラッグにボールが「くっついたら」ホールアウトというルールです。現在アメリカのプロゴルフツアーで活躍中の畑岡奈紗選手も、地元の茨城県笠間市立岩間第二小のクラブ活動でスナッグゴルフに熱中。その後ゴルフに転身したことは、広く知られるところです。
32クラブ33カ所と日本一ゴルフ場が多い市原市ですが、すべての小学生たちにゴルフが身近な存在というわけではありません。千葉県女子プロゴルフ会の女子プロゴルファーから発せられた「ゴルフやったことある人~?」の問いに手を挙げたのは34人のうち3、4人でした。しかしプロからグリップとアドレスを教わるという、ぜいたくな機会に恵まれた子どもたちの上達スピードは驚異的。基本の指導からわずか数分後にはフルスイングで好ショットを連発する児童も現れました。
スクランブル方式(ティーショットを全員で打ち、最も良いポジションに止まったボールを選択し、その位置から全員がプレー)のチーム戦では「ホールインワン」が飛び出す一幕も。各チーム、仲間同士でお互いに励まし合い、一喜一憂しながら優勝を目指しました。約1時間半のスナッグゴルフを楽しんだ後の成績発表も大いに盛り上がり、最後の「またゴルフをやってみたいと思う人~?」の問いには全員が「はーい!」と手を挙げました。
学校に戻ると、3クラスはそれぞれの教室に戻り、指導にあたった8人の女子プロゴルファーたちと質疑応答をしながらの給食タイム。メンバーは内田真由美プロ、牧野映子プロ、鈴木萌子プロの3人が市原市出身で、あとの5人も全員が千葉県に在住か在勤が入会資格である「千葉県女子プロゴルフ会」(会員59人)のプロゴルファーでした。
この日のゴルフ体験の対象は、5年生の3クラス。97人の児童の中には「おじいちゃんがゴルフ場で働いています」と名乗りを上げた児童もいました。「ゴルフの聖地」を目指す市原市の子どもたちの多くが、この日の体験でゴルフに対しての親近感を持ったことは確か。特に鈴木プロは、ゴルフを始めたのがこの日の児童たちと同じ小学5年生から。大いに刺激を受けた児童たちも多かったはずで、担任の一人は「うちのクラスは31人のうち10人が(ゴルフを)やりたいと書いていました」と明かしてくれました。
団塊ジュニア世代が高齢者となる「2040年問題」も視野に
市原市が教育委員会と一体となって実現させた試みは、今年度中に10校で11回が予定されていて、この日が9校目。ここまで市原が力を入れている背景には、ゴルフが市原の基幹産業に位置付けられている現実があります。
市原市の人口は約27万人ですが、日本一多い33カ所のゴルフコースに、年間約176万人ものゴルファーが来場しています。このゴルファーたちが支払ったゴルフ場利用税の7割が市原市に地方交付税として入り、その額は実に6億8350万円に上ります。この他ふるさと納税ではゴルフボールの返礼品が人気。「市原ゴルフクラブ柿の木台コース」(市原市牛久)のフロントに専用のタブレット端末を置き、返礼品のゴルフ場利用券がその場で得られる取り組みを試験的にスタートさせています(来年3月末まで)。
一方で深刻なのはゴルフ場の人手不足。日本で人口の最も多いグループを構成する約800万人の「団塊の世代」(第1次ベビーブームの1947~49年生まれ)が75歳以上の後期高齢者となる2025年まで3週間を切りました。国民の5人に1人が後期高齢者となる超高齢化社会が深刻化することで、介護費や医療費の急増など各方面に影響が及ぶことを意味しています。
その「2025年問題」によって、すでにゴルフ場は人手不足に陥っています。キャディーやフロント、レストランの接客部門はもとより、フェアウェイやグリーンのメンテナンスをするコース管理部門などの高齢化が進み、人員の補充は待ったなしの状況なのです。前職はゴルフ場の支配人である市原市の地方創生部の稲田康男主幹は、ゴルフ場のリクルートに苦労した経験をこう明かします。
「求人票を配りに行っても、市原市だと(人材を)臨海部の企業に持っていかれてすごく苦労しました。ゴルフ人口は日本人全体の統計で1割。9割はゴルフをしない。でも小中高でゴルフに関わる、こういう姿を見ていれば『ゴルフを楽しそうにしていたから、いいんじゃない?』っていう保護者の後押しも出てくるのかなと思います。ゴルフ場は朝早いけど、そのぶん早く帰れるし、休みもしっかり取れますから。特に高校生には(卒業後)とてもいい就職先だと思います」
すでに市内のゴルフ場では、高校生の職場見学バスツアーも実施され、鶴舞CCや他5コースでは実際に就職しているOBと交流し、仕事の内容や職場環境について実際に聞く機会も設けられました。小学生の頃からゴルフに接していれば、地元のゴルフ場で職住近接の生活を選択する若者も増えていくはず。そうなれば「2025年問題」はもとより、団塊ジュニア世代が高齢者となる「2040年問題」にも、明るい兆しが見えてきます。
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