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- 米女子ツアーの主役交代はなぜ起きた? 日本躍進の裏で“韓国失速論”を再検証【韓国女子ゴルフの現在地】
日本勢が米女子ツアーで存在感を強める一方、賞金規模では接近する韓国女子ツアー。なぜ主役が入れ替わりつつあるのか、競技環境や海外挑戦減少の背景から韓国女子ゴルフの現在地を探る。
いま、米女子ゴルフツアーの主役は「日本」だ――。2025年シーズンの日本勢の活躍について、韓国メディアはそう伝えていた。山下美夢有、西郷真央のメジャー制覇に始まり、新人賞争い、さらにはルーキーイヤーながら複数の初優勝者が誕生するなど、日本勢の名前がリーダーボードに並ぶ光景は、もはや日常となっている。
勝ち方の多様さ、選手層の厚みはいずれも、かつてない水準だ。その光が強まるほど、もう一つの問いが浮かび上がる。かつて「世界の中心」にあった韓国女子ゴルフはいま、どこにいるのか。韓国勢は本当に勢いを落としているのだろうか。それとも、単に見え方が変わっただけなのか。本連載では全6回にわたり、韓国女子ゴルフの現在地を探っていく。(文・キム・ミョンウ)
KLPGAは「規模」でJLPGAに接近

韓国女子プロゴルフ協会(KLPGA)は昨年12月、2026年シーズンのツアー日程を発表した。全31試合、賞金総額は347億ウォン(約37億5000万円)。一方、日本女子ツアー(JLPGA)は37試合で、賞金総額は44億3500万円となっている。
韓国の一般紙「ソウル新聞」は、大会数こそ日本が上回るものの、「1試合あたりの平均賞金はKLPGAが約11億2000万ウォン(約1億2000万円)、JLPGAが約12億ウォン(約1億3000万円)で、ほぼ肩を並べる水準にある」と報じた。
今季の韓国ツアーは31試合すべてが賞金総額1億円超。一方、日本ツアーは37試合中5試合が1億円未満となっている。賞金規模という観点では、日韓両ツアーは同水準に近づきつつあると見ていいだろう。
ここで1982年にさかのぼってみる。当時のJLPGAツアーは33試合が開催され、年間9勝を挙げて賞金女王となったト阿玉(ト・アギョク)の獲得賞金は3902万9644円。一方、同年のKLPGAツアーはわずか5試合で、5勝を挙げた具玉姫の獲得賞金は約125万ウォン(約13万5000円)に過ぎなかった。
この数字を踏まえ、「ソウル新聞」はKLPGA顧問で、かつて日本ツアーでプレーした姜春子(カン・チュンジャ)氏の証言を紹介している。
「韓国でプロになっても出場できる試合が少なく、賞金だけではとても生活できなかった時代。日本ツアー進出は選択肢ではなく、必須だった」と当時を振り返る。
だが、いまは状況が大きく変わった。かつて“日本に出稼ぎ”していた韓国選手たちにとって、国内ツアーだけで十分に回れる環境が整いつつある。この前提は、まず押さえておく必要がある。
それでも「海外挑戦」が減った理由
ただ、その華やかな数字の裏側で、もう一つの変化も起きている。韓国が世界を席巻していた時代には、「国内で勝てば、次は海外へ」という強烈な挑戦圧が存在した。しかし近年、その熱は明らかに弱まりつつある。
韓国メディアの多くは、「韓国は米ツアー進出を避け、日本はむしろ積極的に出ていく雰囲気がある」と指摘する。国内ツアーが豊かになったことで、「韓国で十分に稼げるのに、なぜ高コストの海外遠征に出るのか」という合理的な判断が働きやすくなったのだ。
さらに、競技環境に対する危機感も指摘されている。昨年、韓国ツアーに出場した申ジエは、「人気は高まったが、残念な部分も多い」「ピンポジションやコースバランスに課題がある」「柱が弱いのに肉付きだけ良くなった」と、辛辣なコメントを母国メディアに寄せた。
別のメディアでは、韓国のトーナメントコースはスコアが出やすく、「勝ちやすい」構造になっているとの指摘もある。裏を返せば、世界基準で勝つための技術が育ちにくい環境とも言えるだろう。
一方、日本ツアーでは4日間大会の増加や、セッティング難度を高める取り組みが進められている。韓国選手の中には「日本のメジャーはコース状態が良く、しかも韓国より難しい」と舌を巻いたという声もある。日本の台頭は偶然ではなく、ツアー運営の方向性そのものが選手の競争力と結びついている――。韓国側がそう捉え始めている点も見逃せない。
「韓国が弱くなった」とは言い切れない
では、韓国女子ゴルフは衰退しているのか。結論から言えば、そう言い切ることはできない。世界ランキングに名を連ねる人数、海外メジャーでの存在感、そして優勝者数という「結果」を見ても、韓国は依然としてトップ層を維持している。
むしろ起きているのは、「勢いの可視化」による見え方の変化だ。日本が大きく伸びたことで、相対的に韓国が沈んで見えているに過ぎない。
「韓国は弱くなった」と一言で片付けるのは簡単だ。しかし、KLPGAツアーの規模が拡大し、興行としては黄金期に近づいているにもかかわらず、なぜ世界の主役が日本に移りつつあるのか。この問いこそが本質だろう。
次回は、KLPGAツアー内部に漂う“緩み”に焦点を当てる。コース難度やセッティング、競技環境の変化といった構造的な問題から、その正体を掘り下げていきたい。
キム・ミョンウ
1977年生まれ、大阪府出身の在日コリアン3世。新聞記者として社会・スポーツ取材など幅広い分野を担当。その後、編集プロダクションを経てフリーに転身。2010年、サッカー北朝鮮代表の南アフリカW杯出場決定後、日本メディアとして初めて平壌で代表チームを取材し、『Number』に寄稿。2011年から女子プロゴルフの取材も開始し、日韓の女子プロとも親交を深める。現在は女子ゴルフとサッカー、アスリートインタビューなどを中心に雑誌やWEB媒体に寄稿。著書に「イ・ボミ 愛される力」(光文社)。
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