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- KLPGAツアーは黄金期なのに…申ジエが放った「柱が弱いのに肉付きだけ」の真意は?【韓国女子ゴルフの現在地】
賞金規模は拡大し黄金期を迎えるKLPGAだが、易化するコースと競技環境への懸念が浮上。申ジエの「柱が弱い」発言を軸に、韓国女子ゴルフの競争力低下の構造を探る。
KLPGA(韓国女子ツアー)は数字の上では“黄金期”にある。2026年シーズンは31試合、賞金総額は347億ウォン(約37億5000万円)。日本のJLPGAに迫る規模に成長し、選手が国内だけで十分に稼げる環境も整った。
しかしその充実が、皮肉にも「世界で勝つ力」を削いでいるのではないか――。韓国ゴルフ界では今、KLPGAの競技環境そのものに疑問符がつき始めている。キーワードは昨年に起こっていたコースの“易化”と、それに伴うツアーの空気感の変化だ。(文・キム・ミョンウ)
昨季夏場の大会で優勝スコアが示した“異変”

昨季のKLPGAツアーで象徴的だったのが、「優勝スコアの異常値」だ。7月末から8月にかけ、4試合連続で驚くようなバーディー合戦が続いた。
「オーロラワールドレディス選手権」で通算19アンダー、「済州サムダスマスターズ」で通算21アンダー。そして極めつけは「メディヒール・韓国日報」でホン・ジョンミンが記録した通算29アンダー。KLPGAツアーの72ホール最少ストローク・最多アンダーパーの新記録だった。続く「BCカード・韓経レディスカップ」でも通算19アンダーで決着している。これは偶然なのか。
もちろん、優勝者の実力は称賛されるべきだろう。ただ、好スコアの続出が「ツアーの進化」を意味するとは限らない。むしろ韓国国内では、「簡単すぎるセッティングが続けば、選手のレベルが落ちる」という危機感が強まっている。
「距離が短い」「ラフが薄い」韓国メディアの指摘
こうした異変に対し、韓国紙「国民日報」のゴルフ担当記者はコラムで踏み込んだ。
「全長が短くなった」「パー5の多くが2オン可能」「相当数のパー4でロングアイアンを使わず、ショートアイアンやウェッジばかりになる」。つまり、14本のクラブをまんべんなく使わせる設計が崩れているというのだ。
さらに同紙は、セッティングが易化する背景にも言及する。ポイントは「スポンサー」と「運営都合」だ。
「難度を上げれば試合進行が遅くなり、出場選手が多いKLPGAではプレー時間が延びやすい。興行として成立させるため、そしてスポンサーの意向をくみ取るため、攻めたセッティングを避ける傾向が出てくる」。
猛暑の中で少しでも早く競技を終えたい事情も重なり、結果的に“勝ちやすい”方向へ寄っていく。こうしてツアーが“観る側にやさしい”大会を選べば選ぶほど、世界で勝つための強度は薄れていく--同紙はそのような見方を示していた。
期待の大型新人が勝てない“現実”
この議論に現実味を与えたのが、韓国の期待株ユン・イナの苦戦だ。
2024年KLPGAツアーで大賞(年間女王)、賞金女王、平均ストローク1位の3冠を獲得。満を持して米ツアーに挑戦し、最終予選会(Qシリーズ)を8位で通過した“韓国の希望”だった。だが実際は予選落ちが続き、トップ10入りは遠い。本人も「米ツアーのコースはあまりにも難しい」と語り、求められるショットの質の違いを認めていた。
ここは日本と対照的だ。山下美夢有、竹田麗央、岩井明愛、岩井千怜らはルーキーでも勝利を挙げ、新人賞争いも日本勢が中心となった。同じくルーキーとして期待されたユンは蚊帳の外に置かれた形だ。韓国メディアが提示する仮説は、現実味を帯びて見えてくる。
「国内で勝てる環境」が、そのまま「海外で勝てる育成」につながるとは限らない。その現実が突きつけられている。
申ジエが母国ツアーに突いた核心「人気あるが残念な部分も」
この論点を最も鋭く言語化したのが、昨年4月の韓国ツアーに出場した申ジエの言葉だ。韓国総合ニュースサイト「ニュース1」によると、申はツアー運営についてこう語った。
「KLPGAツアーは過去に比べて人気は高まりましたが、残念な部分も多いと感じました。ピンポジションの問題があり、コースのバランスが保たれていない印象を受けました。競技委員もレギュラーツアーの経験者がいないと聞きました。現役時代の経験が必要なのに、この部分への理解が少し足りないようにも感じました」
運営体制の課題に踏み込んだ上で、決定的だったのがこの一言だ。
「KLPGAツアーは柱が弱いのに、肉付きだけ良くなった感じに見える」。
人気があり、スポンサーもつき、賞金も増えた。だが競技の“骨”が鍛えられていない--世界基準で見れば、そこにズレが生じる。申はさらに「この雰囲気が続くなら海外で活動中のトップランカーは戻るのを躊躇する」とも語っており、単なる批判ではなく、母国ツアーへの警鐘でもある。
第1回で触れたように、KLPGAは規模拡大でJLPGAと肩を並べるところまで来た。しかし第2回で見えたのは、その“充実”が競技力の強度と必ずしも一致していない現実である。次回は、この「ぬるさ」の背景にあるもう一つの軸に迫る。
なぜ韓国選手は以前ほど米ツアーへ向かわなくなったのか。ウォン安や遠征コストだけでは片付かない、リスクと成功モデルの変質を掘り下げていく。
キム・ミョンウ
1977年生まれ、大阪府出身の在日コリアン3世。新聞記者として社会・スポーツ取材など幅広い分野を担当。その後、編集プロダクションを経てフリーに転身。2010年、サッカー北朝鮮代表の南アフリカW杯出場決定後、日本メディアとして初めて平壌で代表チームを取材し、『Number』に寄稿。2011年から女子プロゴルフの取材も開始し、日韓の女子プロとも親交を深める。現在は女子ゴルフとサッカー、アスリートインタビューなどを中心に雑誌やWEB媒体に寄稿。著書に「イ・ボミ 愛される力」(光文社)。
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