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- 日本人の“レジャー”を豊かにしてくれたヤマハの功績を“バブル博士”が振り返る/木村和久『ゴルフ=レジャー宣言』
ヤマハのゴルフ用品事業撤退のニュースには、当コラム筆者も衝撃を受けました。平成~令和の日本を縦横無尽に遊び尽くしてきたコラムニストの木村和久氏が、浅いのか深いのかよく分からないこの問いを考察していきます。
ヤマハ撤退でゴルフ界に衝撃!
ヤマハがゴルフ用品事業から撤退するニュースは、ゴルフ界に衝撃を与えました。今回は様々な視点でこのニュースを掘り下げてみます。
1)ブランド競争に負けた理由
最近のゴルフクラブは完全に外国有名ブランドの独壇場で、国産メーカーは昔の勢いがありません。
新素材の開発競争まですれば、莫大な費用がかかり、国内マーケット頼みの国産メーカーでは、もはや太刀打ちできないのです。
個人的にはヤマハのクラブは「UD+2アイアン」やウェッジを10本程持っており、いまだ現役で使っていま
す。「UD+2アイアン」はその名の通り2番手飛ぶのが売りで、シニア世代でもピッチングウェッジが100ヤード超えると好評でした。

けど、アイアンは買い替え需要が少なく、さほど儲からないんですよね。
やはりクラブの売れ筋の本命はドライバーで、それは見栄の部分もかなりあります。朝にみんなが集まった時のクラブ品評会で、有名ブランドの最新ドライバーを持っていれば、話題の主役になれるというもの。
海外ブランドのドライバーの価格はお高めで、今や軒並み10万円超えです。一方、国産メーカーも8~10万円ぐらいはしますか。ちょっとだけ安いです。
消費者心理としては8万円の国産ドライバーに2~3万円足せば、人気が高い海外ブランドのドライバーが手に入る、だったらそっち、という心理が働くようです。
2)ヤマハのテーマは生活を楽しむ
ヤマハがゴルフ産業に関わるようになるのは、4代目社長で中興の祖と言われた川上源一からです。彼は1953年、欧米の視察に出向き、その時、余暇を楽しむライフスタイルを見てえらく感動し、日本も近い将来そういう時代が来ると予見したのでした。
それから楽器製造のヤマハから総合レジャー産業のヤマハへ舵を切り始めます。1955年に二輪車部門を独立させヤマハ発動機を設立します。
バイク製造に始まりスクーター、クルーザー、水上バイク、果ては産業用ロボットまでと、世界的な企業に成長させました。
現在ヤマハ本体の売上が約4600億円、それに対しヤマハ発動機は約2兆5000億円。後発の方が5倍も売り上げているのです。
一方ヤマハ本体でも音楽教室やポプコン(ヤマハポピュラーソングコンテスト)を立ち上げ、リゾート産業へ触手を伸ばし、合歓の郷(現NEMU RESORT、三重・志摩市)、はいむるぶし(沖縄・小浜島)、キロロ(北海道・余市郡)などのリゾートを手掛け、ゴルフ産業にも進出します。
3)ヤマハのゴルフ産業進出
ヤマハがゴルフに進出したのは1976年です。川上源一は名匠・井上誠一にお金はいくら使っても構わないと言って依頼し、傑作と言われる葛城ゴルフ倶楽部を開場させました。
葛城GCに行ったことがありますが、井上誠一ワールド全開で、バンカーだらけのホールとかね。長い谷越えホールもありで、かなり刺激的なコースでした。今でも「ヤマハレディースオープン葛城」の舞台として人気です。
1975年にはヤマハ発動機がゴルフの乗用カートに参入しています。現在、日本のゴルフ場ではヤマハの乗用カートを目にする機会が一番多いと思います。
ヤマハ発動機は乗用カートのモーター部分とエンジン部分の両方を作れるのが売り。山岳コースなどでは、どうしてもエンジン付きに頼らざるを得ないケースもあり、そのリクエストに応えたのです。
乗用カートの市場は世界で約55億ドルほど。その中でヤマハは世界2位で23%のシェアを誇り、ざっと1800億円ほどの売り上げがあるというからびっくり。
一方、ゴルフクラブは1982年に参入し、世界初のカーボンコンポジットヘッドを完成させます。わずか3年前には過去最高の売上げ100億円あったのですが、直近では30億円程度と急激に落ち込み、10億円超の赤字に。撤退するのも仕方のないことかもしれません。
3)選択と集中
ヤマハのお家芸は見事な撤退戦ができることです。ダメだと思ったらやめるも戦法のひとつ。リゾート経営で言えば、過去に前述のキロロや合歓の郷、はいむるぶしに加え、伊勢カントリークラブなどを売却してきています。
もし今キロロリゾートを持っていたら、インバウンドブームですごく儲かったと思いますけどね。何しろ雪質が抜群に良いし、札幌に比較的近く立地が良いんですよ。
そんなわけで、大胆な提案ですが、今後はヤマハグループの資本の選択と集中をさせ、いっそゴルフ用品のグローバルブランドを買収するテはあると思います。実際、テーラーメイドやタイトリストはいずれも2000億円前後で別々の韓国系企業に買収されていますから。ヤマハはグループ全体で売り上げが3兆円あるから、できないことはないでしょう。
ただ、ヤマハは基本モノづくりの会社だから、M&Aをやりたがるか? そこが問題です。
ちなみにヤマハイズムが、今でも残っている場所を最後に紹介しておきます。葛城ゴルフ倶楽部に併設してある北の丸という古民家を改築して作った、豪華な旅館があります。その一番奥の離れにオーディオルームが残されています。
そこに晩年の川上源一が長期滞在していました。部屋にはヤマハの総力を挙げて作った超豪華なオーディオセットがあり、日夜クラシックを嗜んでいたとか。
一度取材で伺いましたが、それが実に質素で良いんです。目の前が広い庭ですが、ごてごてしてなくて、アプローチにぴったしの一面の芝。その芝だらけの庭を見て、好きな音楽を聴いて余生を送ったと。精神的な贅沢とは何か分かっていたんでしょうね。
ヤマハは余暇を楽しむ手助けをするのが企業スピリット、今後もゴルフとは何かしら関わり続けていくんじゃないですかね。
文/木村和久
1959年生まれ、宮城県出身。株式投資から大衆文化まで、さまざまなジャンルで“現代”を切り取るコラムニスト。有名ゴルフ媒体へも長く寄稿してきており、スイング理論やゴルフ場設計にも造詣が深い。近年はマンガ原作者としても活躍。
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