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  • ファウラーとスピースがリブゴルフにあらためて「NO!」 強気に転じたPGAツアー“統合”にどんでん返しはあるか?
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ファウラーとスピースがリブゴルフにあらためて「NO!」 強気に転じたPGAツアー“統合”にどんでん返しはあるか?

2024.02.06 舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
リブゴルフ(LIV Golf) 砂場Talk(バンカートーク) 米国男子ツアー

PGAツアーとサウジアラビアの政府系ファンド「PIF(パブリック・インベストメント・ファンド)」の統合が秒読みに入っているとみられているが、トップ選手のリッキー・ファウラーとジョーダン・スピースが相次いでPIFやリブゴルフに「NO」の姿勢を見せている。

数億ドルで獲得したラームを持て余し気味!?

 世界のゴルフ界の勢力争いは、まるでドラマのような展開を見せ始めている。

 PGAツアーのジェイ・モナハン会長とリブゴルフを支援するサウジアラビアの政府系ファンド「PIF(パブリック・インベストメント・ファンド)」のヤセル・ルマイヤン会長が統合合意を電撃的に発表し、世界のゴルフ界を驚かせたのは昨年6月のことだった。

温厚な人柄で知られるリッキー・ファウラーだが、リブゴルフ選手には厳しい見方をしているようだ 写真:GettyImages
温厚な人柄で知られるリッキー・ファウラーだが、リブゴルフ選手には厳しい見方をしているようだ 写真:GettyImages

 しかし、一方的な発表はPGAツアー選手たちの怒りを買い、その後、正式統合への交渉はPGAツアーの理事会に委ねられた。だが、その交渉は難航し、なかなか形にはならなかった。

 そんな膠着状態にPIF側はしびれを切らしたのか、昨年12月、リブゴルフは3億ドルとも6億ドルとも推定されている破格の移籍料を支払ってPGAツアーのスター選手だったジョン・ラームを引き抜き、ラームは突然、リブゴルフ選手になった。

 PIFやリブゴルフにしてみれば、ラームを獲得したことは、ビッグスターを失って大打撃を受けたPGAツアーが自分たちの側へ寄り添わざるを得なくなるよう仕向けるための切り札だったはずである。

 しかし、大金をオファーしてラームという大魚を釣り上げたリブゴルフは、驚いたことに、その大魚をどう生かすべきかをあらかじめ考えてはいなかったと見えて、ラームを持て余している様子が伝わってきた。

 世界ランキング3位のラームは、言うまでもなく、リブゴルフ選手の中では最高ランクの「王様」である。

 そんなラームが、他の選手がキャプテンとして率いているチームに入るはずはなく、彼は自分がキャプテンとなって自分のチームを持つことを移籍の際の前提条件にしていた。

 だが、リブゴルフにはすでに12名のキャプテンが各々率いる同じく12のチームが存在しており、4名1組、合計48名で競い合うのがリブゴルフ創設時からの競技形式とされている。

 ビッグスターのラームが移籍してきたからと言って、既存のキャプテンを引きずり降ろしてラームと入れ替えるわけにはいかず、それならば、ラームのチームを新設する以外に方法はないが、そうなるとチーム数は13になり、4名×13チーム、合計52名による競技へとフォーマットを変更する必要に迫られる。そうなれば、賞金配分やリブゴルフのポイント配分にも変更が必要となる。

 そうした数々のチェンジを行なうべきなのかどうか。果たして、どうするのがいいのだろうかと、PIFやリブゴルフは思案に暮れていたはずである。

 その矢先の1月31日、PGAツアーは米国のコンソーシアム(企業連合)「SSG(ストラテジック・スポーツ・グループ)」とパートナーシップを結び、SSGから30億ドルの投資を得て、営利法人「PGAツアー・エンタープライズ」を創設することを高らかに発表した。

「PGAツアー・エンタープライズ」は、昨年6月の統合合意の発表の際には、PGAツアーとPIFが手を取り合って創設するものとされていた。

 だが、今回PGAツアーが手を取り合った相手は、PIFではなくSSGだったのだから、PIFは度肝を抜かれたに違いない。結局、ラームを獲得したことは、PIFにとっての切り札には、ならなかった様子である。

「今さらPGAツアーへストレートに戻すべきではない」

 振り返れば、昨年6月にPGAツアーのモナハン会長がPIFのルマイヤン会長と統合合意を一方的に発表した直後、PGAツアー選手たちからは怒声が飛び交い、大荒れとなったが、彼らが激怒した背景には、いろいろな想いがあったのだろうと、今、あらためて感じさせられている。

 選手たちの意向を聞くことなく、水面下で勝手に交渉を進め、勝手に合意を発表したモナハン会長への不信感は、もちろん大きかったに違いない。

 だが、伝統も格式もあるPGAツアーの選手たちの中には、マネーパワーをかざしてのし上がってきた新興のリブゴルフ、そしてサウジ勢力と寄り添って歩む未来に対し、拒否反応や嫌悪感を抱いた者も少なくなかったのではないだろうか。

 実際、その後のPGAツアーの理事会や選手会では「PIFとの統合に向けて、非協力的な選手がいるために、討議がなかなか進められない」という声がしばしば聞こえていた。

 だが、全体的に見れば、大勢が「統合に向かって進んでいる」とされていたせいか、PIFやリブゴルフに対するアンチ発言は、あまり表には出てこなかった。

 かつてはアンチ・リブゴルフの急先鋒だったローリー・マキロイに至っては、昨秋、PGAツアーの理事職を突然辞任し、「リブゴルフはすばらしい」と賞賛するなど、すっかり態度を一変させた。

 マキロイはつい最近も「リブゴルフ選手がPGAツアーに戻ることを僕は歓迎する。誰かに罰を科すことは難しいからね」とコメントしていた。

 ところが、PGAツアーがSSGとのパートナーシップ締結を発表するやいなや、この半年ほどの間、押し殺されていたPIFやリブゴルフに対するアンチ発言が次々に声になって上がり始めている。

 リッキー・ファウラーは「リブゴルフ選手は、自分で決断を下して移籍したのだから、今さらPGAツアーへストレートに戻すべきではないと思う。大なり小なり、何かしらのペナルティーを科すべきだ。とはいえ、その決定権は僕にはないんだけどね」。

 温厚な性格で知られるファウラーが、リブゴルフ選手のカムバックを手放しでは歓迎しないと言い切ったことは、PGAツアーの仲間の選手たちや関係者にとっても、驚きだった様子である。

 そして、ファウラー同様、PGAツアーきってのナイスガイで知られるジョーダン・スピースは、SSGからの30億ドルの投資に加え、「PIFからも後々、追加投資があるかもしれない」という噂に対して意見を求められると、「僕は、それは必要だとは思わない」と、これまた、きっぱり言い切った。

 スピースの発言を咀嚼すると、PGAツアーはマネー戦争では太刀打ちできないと悟ったからこそ、PIFと統合せざるを得ないと一度は考えたのだが、30億ドルというビッグマネーを投じてくれるSSGという強い味方を得た今、PGAツアーはPIFと手を組む必要はなくなったという解釈ができそうである。

場当たり的なフォーマット変更はリブゴルフの焦り?

 さて、話をラームに戻すと、大魚を持て余し気味だったリブゴルフは、結局、今季初戦のメキシコ大会(2月2日~4日)の開幕直前に、ラームをキャプテンとする13番目のチーム「LegionVIII」を創設し、新たな3名を彼のチームメンバーに据えた。

 3名のうちの1名は、32歳の英国人、PGAツアー選手のティレル・ハットンで、彼は今年1月上旬までは当たり前のようにPGAツアーに出場していたが、1月末に自身の生涯獲得賞金のほぼ3倍に近い6300万ドルをオファーされると、あっさりリブゴルフへ移籍し、ラームのチームに入った。

 もう1人は、昨年12月に初開催されたリブゴルフの予選会(プロモーション・イベント)でトップ3入りし、今季の出場資格を手に入れたジンバブエ出身の26歳、キーラン・ビンセント。

 そして最後の1人は、テネシー大学2年生の19歳の米国人アマチュア、カレブ・サーラットだった。

 ラームやハットンのような実績ある選手たちがお金の力によって引き抜かれることは、周囲にはどうすることもできず、ビンセントのように予選会を突破するという正式なプロセスを経てリブゴルフ入りすることに対しては、なおさら外野が口を出せる話ではない。

 しかし、最後の1人、19歳のサーラットは、予選会のような正式なプロセスを踏んだ形跡は皆無で、まだプロの世界を何も知らず、プロの世界における実績も皆無。将来の可能性は、まったくの未知数である。

 そんなアマチュアを慌てて引き抜き、すぐさま実戦に加わらせようとしているところに、リブゴルフ側の焦燥感が見て取れる。

 ラーム獲得も、13番目のチーム創設も、そのチームメンバー獲得も、どれも「行き当たりばったり」と言わざるを得ない。

 それでもPGAツアーは、今後、PIFからの追加投資を受け、彼らとの統合を進めていくのか。それとも、スピースらが口にし始めたように、もうPIFからの追加投資は「必要ない」と切り捨て、統合話も立ち消えとなるのか。そして、今後の展開には、さらなるどんでん返しが起こるのだろうか。

 ドラマのような展開は、まだまだ続きそうである。

文・舩越園子
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。

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