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年間15億円の年金は2割カット、“中年の夢”への登竜門は廃止… 米シニアの苦しい台所事情は“現役世代”のしわ寄せ!?
PGAツアーのシニア部門である「PGAツアー・チャンピオンズ」は、かつてのPGAツアーをにぎわせたスターたちが気さくな姿を見せながらプレーする人気のツアーとして知られる。しかし、最近は苦しい台所事情をうかがわせるニュースが立て続けに出てきている。
「50歳を超えてから幼少時代からの夢が叶った」
PGAツアーのシニア部門である「PGAツアー・チャンピオンズ」は、かつてレギュラーツアーを沸かせたスター選手たちの円熟味を増したプレーを堪能できるとあって、長年、米国のゴルフファンから愛されてきた。
1980年に「シニアPGAツアー」という名前で創設され、2003年からは「チャンピオンズツアー」、2016年からは「PGAツアー・チャンピオンズ」が正式名称となり、現在もアーニー・エルスやレティーフ・グーセンといったメジャー覇者や有名選手が多数参戦している。
しかし、どうしたわけか、近年は入場者数もTV視聴率も低下傾向。採算性の悪化が指摘されるなか、PGAツアーは今年9月に「チャンピオンズのQスクール(予選会)を廃止する予定」というメモを選手たちに事前配布した。
そして翌10月、Qスクール廃止の正式決定がPGAツアーから発表された。
PGAツアー・チャンピオンズは、50歳の誕生日を迎えたPGAツアー選手が穏やかな笑顔をたたえながらやってくる「セカンドキャリア」の場となることが大前提で創設されたシニア部門だ。
その一方で、若い時分にプロゴルファーになれなかった人々、あるいは、あえてプロゴルファーにならずに別の職業に従事していた人々が、「50歳になったらシニアデビューしたい」という夢を実現させる場にもなってきた。そのための登竜門がQスクールだった。
Qスクールで得られる出場枠はたった5枠の狭き門。しかし、その狭き門を潜り抜け、生まれて初めてプロのツアーに臨んで大金を稼いだ成功例はこれまでにいくつもあった。

最近でも、22年のQスクールを突破してチャンピオンズにデビューした元クラブプロのロブ・ラブリッツが、23年から今年までの3シーズンで150万ドル超を稼ぎ、「50歳を超えてから幼少時代からの夢が叶った」と感無量の様子だった。
しかし、Qスクールが廃止されたことで、ラブリッツのような夢物語を目にすることは、今後はおそらくないと思われる。
米ゴルフウイークによると、ラブリッツは「私と同じような立場で、私と同じような道を進もうとしていたゴルファーの夢を断たないでほしい」とQスクール廃止を残念がる一方で、「でも、ビジネスとして考えれば、理解できる」とも言う。
というのも、ここ数年Qスクールを突破した選手の顔ぶれは、昨年こそ米国人や元PGAツアー選手が多かったものの、一昨年はデンマーク、オーストラリア、チリ、スウェーデンといった米国以外の出身者、しかもPGAツアー出身ではない選手が目立った。
そのため、チャンピオンズがシニア年齢を迎えたPGAツアー選手の受け皿として創設された経緯を考えると、「これでは本来の創設目的から外れてしまっている」という声が方々から上がっていた。
「チャンピオンズの門戸は“少し”閉じるべきだ」
世界のゴルフ界に目をやれば、USGAもR&Aも、PGAツアーやDPワールドツアー、米LPGAも、昨今は国際化を進めると同時に、才能ある若い選手のスムーズなプロデビューを手助けするためのパスウェイ(道)を次々に創設している。
チャンピオンズがQスクールを廃止したことは、そうした傾向とは真逆の動きであり、「どこの国、どこのツアーの出身かにかかわらず、門戸は開いていくべきだ」という意見は、もちろんある。
しかし、元PGAツアー選手で、現在はチャンピオンズでプレーしているビリー・アンドレードは「チャンピオンズの門戸は“少し”閉じるべきだ」と語っている。
「PGAツアーの先人たちが、さまざまな犠牲を払って築いてくれたシニアの土俵なのだから、PGAツアーの後輩たちに引き継がれるべきだ。それに、Qスクールが廃止されたといっても、外部の選手たちを完全にシャットアウトするわけではない。マンデー予選はこれまで通り行われるのだから、依然としてチャンスは残されている」
確かに元PGAツアー選手のトミー・ゲイニーは、今年マンデー予選からチャンピオンズの大会に出場して初勝利を挙げ、来季の出場権を獲得した。ゲイニーはPGAツアー出身者ゆえ、完全な外部からの成功例ではないものの、アンドレードが指摘している通り、マンデー予選からシード選手になるチャンスは「残されている」と言っていい。
Qスクール廃止の是非を論じるとすれば、最終的にはチャンピオンズというツアーそのものの存在意義を論じることになる。人気回復と採算性向上のために、PGAツアーで活躍した有名選手、スター選手たちを勢揃いさせることを目指すのか、それともシニア年齢を迎えた選手が夢を追う場所というロマンを残すのか。
心情的には「ロマン」を重視してほしいと私は思うのだが、事態は想像以上に切羽詰まっている様子である。
年末に50歳を迎えるウッズが救世主のはずだったが…
米ゴルフウイークによると、PGAツアーはシニア年齢になった選手たちに支給する年金を20%カットすることを、突然この10月に決定。24年までの1000万ドルが、今年は800万ドルに減額されて、多くの選手が困惑しているという。
前述のアンドレードは「僕たちの年金減額を決めたのは、PGAツアーの新CEOブライン・ローラップ氏だ。彼はPGAツアー選手以外のすべての人々の収入をカットしている」と激怒しているそうだ。
かつてPGAツアーのスター選手だったピーター・ジェイコブセンも怒りの声を上げているという。
「PGAツアーには明らかに大金があるはずだが、その大金はPGAツアーの選手をリブゴルフへ移籍させないために使われている。とんでもないビッグマネーが、PGAツアーのごく少数の選手のためだけに使われている現状は、PGAツアーが少しずつリブゴルフ化していると言っていい。そして、僕たちチャンピオンズの選手の運命は、PGAツアーの決定次第で左右されてしまう」
リブゴルフ騒動を経て、SSG(ストラテジック・スポーツ・グループ)からすでに15億ドルが投入されたPGAツアーは、その後、さらに15億ドルを得ることも約束されている。だからこそ、ジェイコブセンは「PGAツアーには明らかに大金がある」と指摘したのだろう。
PGAツアーに年金制度が設立されたのは1985年のこと。金額に関する詳細は非公開だが、米メディアによると、当初の金額は25万ドルだったそうだ。それが徐々に増額され、いつしか1000万ドルになった。
それは、一般庶民から見れば、うらやましい限りの破格の年金である。しかし、それでもなお、チャンピオンズの選手からは、こんな声が聞こえてくる。
「この25年ほどは、ずっと1000万ドルのままで、全然上昇していない。本来なら時代の変化に合わせて2500万ドルぐらいになっていてもおかしくないはずだ。それなのに、突然800万ドルに減額されるなんて……」
これまで甘やかされすぎて少々ぜいたくになっているようにも感じられ、そうした気持ちや姿勢がにじみ出ているせいで、チャンピオンズの人気が低下しているのではないかとも思えてくるが、ともあれ、同ツアーが苦境に陥っていることは、紛れもない事実だ。
今年12月30日に50歳の誕生日を迎えるタイガー・ウッズが来季からシニアデビューして救世主になってくることが期待されていたが、この10月に7度目の腰の手術を受けたウッズが再びクラブを握れる日は、果たしていつになることか……。
ウッズ参戦まで、いやウッズ抜きでも、チャンピオンズと選手たちが持ちこたえ、苦境を脱してくれることを祈るしかない。
文・舩越園子
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。
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