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新設「チャレンジャー」にマキロイ「要はコーン・フェリーだよね?」で物議 選手もよく理解していないPGAツアー大改革
PGAツアーが2028年からの実施を目指す大改革。ブライアン・ローラップCEOは「トラベラーズ選手権」開幕前の6月23日(米国時間)に会見を開き内容を説明したが、選手に理解が広まっているとは言い難い状況だ。
リブゴルフの存在が腰の重いPGAツアーを改革へ駆り立てた
PGAツアーのブライアン・ローラップCEOは「トラベラーズ選手権」開幕前の6月23日(米国時間)に会見を開き、2028年からの実施を目指すPGAツアー大改革に関する決定事項を発表した。
とはいえ、今回発表されたのは大改革の「大枠のみ」で、これから詳細が決定される事柄は多々残されている。
しかし、「大枠のみ」と言っても従来とは大きく異なり、分かりにくいことも多いため、まずは今回発表された「大枠」を分かっている範囲で掘り下げてみよう。

そもそも、PGAツアーはなぜ大改革を行う必要があったのか。そのきっかけは、やっぱり「リブゴルフ」だった。
これまでPGAツアーでは長年、選手や関係者などから、さまざまな問題点が指摘されていた。だが、ゴルフ界の独占的存在だったPGAツアーは、そうした声を聞き流し、我が道を歩んできた。
しかし、2021年にリブゴルフが創設され、ゴルフ界がPGAツアーの独占市場ではなくなったことで、PGAツアーが黙認してきた問題点が次々に露呈する形になった。
そんななか、今、求められているのは、リブゴルフに対抗するのではなく、長年の問題点を修正し、正真正銘の揺るぎない地位を確立することだと考えたPGAツアーは、タイガー・ウッズをリーダーとするFCC(未来競技委員会)を創設。そしてFCCはこの5年間、どうやってPGAツアーを改革すべきかを検討し続けてきた。
偶然か、必然か、今ではリブゴルフは消滅の危機に瀕しており、もはやPGAツアーが敵視する必要性はなくなりつつある。だが、FCCが考案した大改革は28年から実施されることになった。
PGAツアーの舵取り役がジェイ・モナハン会長からローラップCEOに変わったことも、思い切ってメスを入れる動きにつながったと言っていい。
1部「チャンピオンシップ」は2000万ドル級が当たり前に
大改革の最大のポイントは、28年からはPGAツアーが「チャンピオンシップ」と「チャレンジャー」の2部制に変わることだ。
現状では、年間8試合のシグネチャーイベントは賞金総額2000万ドルを誇る「特別な大会」だが、28年からのチャンピオンシップでは、同規模の大会が年間15試合ほど開催され、2000万ドル級は“当たり前”のレギュラー大会に位置付けられる。
チャンピオンシップでは、これらのレギュラー大会にメジャー4大会や第5のメジャーと言われる「ザ・プレーヤーズ選手権」、ポストシーズンのプレーオフシリーズなどを加えた年間23~24試合が開催され、1試合の出場人数は120名、予選カットありの4日間72ホールで競われる。
チャンピオンシップの選手は全試合に出る必要はない。そして、レギュラー大会は賞金もポイント配分もすべて同条件で開催されるため、選手による大会の選り好みは激減すると見られている。
2月から8月の7カ月間、トッププレーヤーが勢揃いする大会ばかりが開催されることで、PGAツアーへの注目と盛り上がりが継続されることを、この大改革は目指している。
ところで、この2部制は、さまざまな討議を重ねた結果、副産物的に後から出てきたものだそうで、ウッズらのFCCが最初に検討したのは、フェデックスカップのシーズンの締め括り方だった。
フェデックスカップは長年、変更に次ぐ変更が重ねられ、競技方法やポイント配分のシステムがどんどん複雑化して、「分かりにくい」「最悪」と言われてきた。
そのため、FCCの討議は、まずシーズンの終わり方を見直すことから始まり、最終戦の「ツアー選手権」をマッチプレーに変えるという斬新な改革を断行することが決まった。
戦いの舞台も、長年のイーストレイクGC(ジョージア州)から離れ、PGAツアーの大会がこれまで開催されてこなかった米国内の名コースを数コース選んだ上で、ローテーションを組んで開催していくことが決まったという。
世界ランキング1位、2位といったトップ中のトッププレーヤーがいきなり敗退してしまうリスクは、もちろんある。しかし、「まずはトライあるのみ」とローラップCEOは意気込んでいる。
ツアー選手権終了後に開催されるフォールシリーズは、現状ではシード落ちした選手たちのサバイバル合戦の場とされている。
しかし、28年以降はPGAツアーと戦略的パートナーシップを組んでいるDPワールドツアーの「アルフレッド・ダンヒル リンクス選手権」や「BMW PGA選手権」といった大会と共催する形を取り、チャンピオンシップのトッププレーヤーも出場する優れた海外大会という位置づけになる。
28年以降はスポンサー推薦の制度を撤廃
無名の新人や長年の苦労人がトッププレーヤーを抑えて優勝するシンデレラ物語は、これまではPGAツアーの懐の深さやアメリカンドリームを象徴する美談だった。しかし、2部制に変わることで、こうしたシンデレラ物語は、おそらく見られなくなる。
そして、28年以降はスポンサー推薦の制度が撤廃されることも発表された。
これまでスポンサー推薦は「なぜ、あの選手?」「アンフェアだ」等々、批判されることが多かった。だが、これが撤廃され、成績のみに基づいて出場資格が決まることは、大会の透明性と競合性を高め、明瞭明解でフェアになる。
だが、伝統的なスポンサー推薦がなくなることを寂しく思う古くからのファンは多いと思われ、これまでは自由に選手を推薦出場させてきたスポンサーから、せっかくの「特権」「旨味」を奪うことになる。
しかし、スポンサーのご機嫌伺いより「選手ファースト」に変えたことは、今回の大改革のキーポイントである。
さらに、スポンサーより「ファン・ファースト」という姿勢も見て取れる。
PGAツアーの試合は長年フロリダやテキサス、カリフォルニアを中心に開催されてきた。広大な土地を擁するこうした州内のコースの方が、物資の搬出入や駐車場の確保などに便利であり、高額を支払っているスポンサーの意向を反映している面も多分にあった。
だが、開催地選びで最も重視すべきは、開催側の利便性でもスポンサーの意向でもなく、そこにゴルフファンがいるかどうか、ギャラリーが集まるかどうかである。
そこで28年からは、ボストンやニューヨーク、ワシントンDC、同じカリフォルニア州内でもサンフランシスコといった都市部のコースで大会を開催していくという。
「チャレンジャー」で年間2勝すれば「チャンピオンシップ」へ即昇格
チャンピオンシップには毎年のポイントランキングの90位までしか残ることができず、91位以下は「降格」となる。とはいえ、いきなりチャレンジャーへ降格するわけではなく、ラストチャンスも実はある。
フォールシリーズの一環として米国内で開催される4~6試合は、91位以下になった選手の生き残りをかけた戦いとなり、人数等の詳細は未定だが、「何人か」がチャンピオンシップに出戻ることができる見込みである。
それもダメだった場合は、翌シーズンはチャレンジャーへ降格となるのだが、ローリー・マキロイは、そのチャレンジャーのことを「要は、コーン・フェリーだよね?」と発言し、物議を醸した。
PGAツアーはマキロイ発言を否定し、チャレンジャーの良さを力説した。年間20試合、1試合の出場人数144名で賞金総額400万ドルは、コーン・フェリーツアーを上回る規模であり、開催地はこれまでのPGAツアーの大会の開催コースが多い。そして年間20試合中7試合は、チャンピオンシップの大会がないオフウイークに開催されるため、注目は高いはずだ、と。
さらに、チャレンジャーで年間2勝を挙げれば、その時点からチャンピオンシップへ即昇格できるという特典もある。
そのチャレンジャーに出るためには、コーン・フェリーツアーやPGAツアー・アメリカズ、PGAツアー・ユニバーシティーを経由するか、あるいはクオリファイングトーナメント(Qスクール)からの挑戦ということになる。長い長い道程になるが、道がある限り、挑んでみる価値はある。
生まれ変わるPGAツアーに、何人の日本人選手が生き残ることができるのか、そして今後、何人が挑むのかに、早くも興味を覚えている。(舩越園子/ゴルフジャーナリスト)
舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。
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