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8000億円つぎ込んだリブゴルフの現在価値は“たった16億円”!? 未払い分に不安も選手たちが冷静な理由
サウジ政府系ファンドの支援打ち切りが決まり、存続の危機に瀕するリブゴルフ。CEOが新たな出資者探しに奔走する一方、巨額の移籍料が未払いになる可能性があるスター選手たちの反応は意外なものだった。
最大の資産は選手たちだが、人間を抵当には入れられない
リブゴルフを率いるスコット・オニールCEOは、サウジアラビアの政府系ファンド「PIF(パブリック・インベストメント・ファンド)」からの支援が今季限りで打ち切られることが決まって以来、PIFに代わる新たな出資者探しに奔走している。
今季の残り試合は、7月23日からの英国大会を含めた4試合と、その後に延期されているルイジアナ大会の縮小開催が予定されており、PIFによる支援は「2026年いっぱいは、フルに支払われる」と言い切ったオニールCEOは、残り試合の開催は可能だと語っている。
しかし、今季分の支援金はまだ全額が支払われたわけではなく、毎月リブゴルフの銀行口座に分割で送金されることになっているとのこと。そして、マンスリーの入金は「いつ途絶えてもおかしくない」とは、リブゴルフ幹部の1人が米メディアに思わず漏らした弱気発言だ。

先週、DPワールドツアーの「BMWインターナショナルオープン」に出場していたリブゴルフ選手のカルロス・オーティスも、「詳しいことは分からないが、リブゴルフの先行きは決していい感じではない」と、米欧メディアに明かした。
オニールCEOが新たな出資者候補に求めている内容は、「9月1日までに3億ドル(約480億円)を出してほしい」というもの。そして、「3億ドルを出してもらえたら、3年で利益を出す」とアピールしている。
しかし、これまでPIFからリブゴルフへ投入された支援金の総額は50億ドル(約8000億円)と言われており、それほど巨額の支援を受けても、ほとんど利益を出すことができなかったリブゴルフに対して、これから3億ドルを出そうという出資者が登場するかどうかは、大いなる疑問である。
米メディアは、企業の倒産や資産価値の評価に詳しい専門家の見立てとして、「新たな出資者に3億ドルを求めているリブゴルフだが、現在のリブゴルフの価値はどんなに高く見積もっても1億ドル(約160億円)以下。いや、1000万ドル(約16億円)にも満たないと言ってもいい」という厳しい評価を紹介している。
リブゴルフに元々どれほどの価値があったのかも疑問と言えば疑問だが、専門家から「せいぜい1000万ドル」と言い放たれるほどの価値しかない現在のリブゴルフが3億ドルの投資を求めていることは、「無理な要求」ということのようである。
それでも奇特な出資者が現れて3億ドルの投資が得られ、27年シーズンを迎えられたとしても、この5年間、一向に向上しなかった人気や注目、TV視聴率が突然アップする保証はどこにもない。
万が一の場合に出資者が差し押さえることができるリブゴルフの財産・資産はあるのかと言えば、不動産や金融商品、高価な機械や機材などは皆無に近く、リブゴルフに残されているのは、大金をはたいてPGAツアーから奪い取ったスター選手たちのみだ。
消滅の危機に瀕している現在のリブゴルフにとって、そうしたスター選手たちは何にも代えがたい貴重な財産である。
しかし、財産とはいえ、プロゴルファーやその権利を売買することはできないため、リブゴルフには抵当に入れられるものは何もないということになる。
さらに言えば、貴重な財産である選手も、すでにブルックス・ケプカやパトリック・リードらが脱退し、創設された当初より価値は下がっている。
ジョン・ラームやブライソン・デシャンボーといったメジャー覇者はまだ残っているものの、すでに年を重ねたリー・ウエストウッドやイアン・ポールター、グレアム・マクダウェルといったベテラン勢ばかりが妙に目に付く。
そんなリブゴルフに対して大金を出そうと名乗りを上げる人物や企業は、果たして、登場するのだろうか。
「今後リブゴルフに何が起ころうとも、僕はまったく平気だ」
リブゴルフが創設された際、PGAツアーから移籍したフィル・ミケルソンの移籍料は2億ドルだと言われている。
デシャンボーとダスティン・ジョンソンは、どちらも1億2500万ドル。少し遅れて移籍したラームの移籍料は、最も高額の3億ドルだったと見られている。
移籍料の契約は、選手とリブゴルフとの間で交わされたもので、選手とPIFとの契約ではない。
そして、PIFからリブゴルフへの支援金が、一括払いではなくマンスリーで分割払いされているのと同様に、選手に対する移籍料の支払いも、リブゴルフから選手へ分割払いされている。
しかし、PIFからリブゴルフへの支援が途絶えれば、リブゴルフから選手への支払いも途絶える可能性は高い。
そして、リブゴルフが破産・消滅といった事態に陥れば、最悪の場合、選手の移籍料は宙に浮く可能性もゼロではないと言っていい。
もしも自分がそんな騒動の渦中の人となってしまったら、「生きた心地がしない」という状況に陥りそうに思えるのだが、リブゴルフの選手たちがさほどビクビクしているように見えないことは、少々意外である。
デシャンボーは、オニールCEOとは別ルートで新たな出資者探しに彼なりに奔走してはいるものの、移籍料の残金の支払いなどを危惧している様子は見られない。
ラームは出資者探しといったことは「僕には分からない」と言い放ち、リブゴルフの今後については「なるようになる」と言って静観している。
そして、冒頭のオーティスも、リブゴルフの先行きは「いい感じではない」と語ったものの、だからと言って、困り果てているわけではない。
「リブゴルフでは、世界中でプレーすることができて、すばらしい経験をさせてもらった。チームの仲間と一緒に戦えたことも、とてもいい勉強になった。そんな素晴らしきリブゴルフが、もしもなくなってしまうとしても、今こうしてDPワールドツアーの大会に出ているように、僕は自分がプレーできる場所を見つけて、そこで戦うのみだ。きっとそうできると思っているから、今後リブゴルフに何が起ころうとも、僕はまったく平気だ」
その言葉が心からの本心なのか、それとも強がりなのかは、正直なところ分からない。しかし、メキシコから米国にやってきてPGAツアーで1勝を挙げ、世界の4つのツアーで合計10勝を挙げてきたオーティスのような選手は、想像以上にタフなのだろう。
いやいや、オーティスはこの5年間にリブゴルフで3400万ドル超を稼いだからこそ、「これだけあれば、余生は安泰」という思いもあるのではないだろうか。
シニア年齢になり、現役を続けるか引退するかを問われたポールターも開口一番、「もう十分稼いだ」というフレーズを口にして、穏やかな顔をしていた。
過去4シーズンは賞金総額2000万ドル、今年は3000万ドルの大会に出場して、破格の賞金を稼いできた選手にとっては、移籍料の一部が未払いになるとしても、「もう十分」という実感があるのだと思われる。
ビッグな移籍料をもらわずしてリブゴルフ入りした若い選手や、これまでに大して稼ぐことができなかった選手たちは、リブゴルフの今後を憂い、戦々恐々としているのかもしれない。
だが、「もう十分稼いだ」派が多勢を占めるのだとすれば、それは「もうリブゴルフはどうなってもいいと思われている」ことを示しており、それを知ってか知らずか、日々、必死に奔走しているオニールCEOがちょっぴり哀れにさえ感じられるのは、私だけではないはずである。(舩越園子/ゴルフジャーナリスト)
舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。
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