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「才能はない、ゴルフをやめようと思った」 遅咲き全英王者R・フォックスを思いとどまらせた“元オールブラックス”父の言葉とは?
今年の全英オープンは、ニュージーランド出身の39歳、ライアン・フォックスがメジャー初制覇を果たした。なかなか結果が出ずにゴルフをやめようとまで思ったフォックスを支えた父の言葉とは?
優勝を争ったサム・バーンズとは真逆の雑草のようなキャリア
ロイヤルバークデールが舞台となった今年の全英オープンは、ニュージーランド出身のライアン・フォックスが、先にホールアウトしていた米国のキャメロン・ヤングに1打差で辛勝し、全英オープン初優勝、メジャー初制覇を達成した。
ニュージーランド出身選手による全英オープン制覇は、1963年のボブ・チャールズ以来、史上2人目。実に63年ぶりの快挙となった。
ニュージーランド出身選手によるメジャー優勝は、チャールズと2005年全米オープンで勝利したマイケル・キャンベルに続く史上3人目となったが、この栄光をつかみ取るまでのフォックスの歩みは、長い長い道程だった。

最終日を最終組でプレーしたのは、この日を通算10アンダー、単独首位で迎えた米国出身のサム・バーンズと、通算8アンダー、2位タイで臨んだフォックスだった。
バーンズは29歳、フォックスは39歳。2人の年齢差は、2人の体型の違いを見れば、歴然としていた。
スラリとしたバーンズは、さすがAJGA(全米ジュニアゴルフ協会)の2013年ジュニア・プレーヤー・オブ・ザ・イヤーを受賞したエリートジュニアだっただけのことはあるとうなずかされる美しいスイングを武器に戦っていた。
その一方で中年太りのフォックスは、クラブを担ぎ上げるような独特のスイングで、その様子はフォックスのゴルフキャリアがレイトスタートであること、戦い方を自己流で必死に見い出してきた苦労人であることを如実に物語っていた。
しかし、スイングは個性的でも、フォックスのプレーペースは実にクイックテンポだった。さっと決断し、さっと構えて、さっと打つ。そんな思い切りのいい彼のゴルフは、眺めていてなんとも小気味良く、下っ腹が少し出てきた中年オヤジの奮闘ぶりには、思わず「頑張れ!」とエールを送りたくなった。
「ハードワークは才能を上回る」と父は何度も言い聞かせた
フォックスという選手は、おそらく日本のゴルフファンにはあまりお馴染みではなかったのではないだろうか。
祖父はクリケットの名選手で、後にニュージーランドのナショナルチームのコーチも務めたという。父親はニュージーランドのラグビーのナショナルチーム、「オールブラックス」のゴールキッカーを1985年から8年間も務め、1999年にニュージーランドでスポーツ殿堂入りを果たしたレジェンドだ。
フォックスは、そんなスポーツ一家に生まれたが、ゴルフ一家ではなかった。
「僕が初めてゴルフをしたのは13歳のときだった」
フォックス本人は「18歳でプロになった」と語っていたが、本格的にプロツアーに挑み始めたのは25歳からだった。
母国のミニツアーなどを経て、オーストラリアンツアーに参戦したが、シード落ちの危機に瀕し、「ゴルフの才能はないと感じて、ゴルフをやめようと思った」。
しかし、そこでやめずに踏みとどまることができたのは、かつて父親から何度も聞かされたこのフレーズを、あらためて噛み締めたからだそうだ。
「ハードワークは才能を上回る」
そうだ。たとえ自分に才能がないとしても、ハードワークを積み重ねればきっと道は開ける。そう思ってゴルフに食い下がったフォックスは、30歳からはDPワールドツアー参戦を開始。通算4勝を挙げた。
37歳でPGAツアーにたどり着き、38歳だった昨年、「ワンフライト・マートルビーチ」でついに初優勝。
さらに、「RBCカナディアンオープン」でも勝利して通算2勝を達成したが、偶然か、必然か、その大会で4ホールに及ぶサドンデス・プレーオフを戦った相手は、驚くなかれ、バーンズだった。
あのときもフォックスは、優勝を競い合う緊迫の場面で迅速で思い切りのいいプレーを披露して勝利したことが、とても印象的だった。
今回もフォックスは、まるでロイヤルバークデールを知り尽くしている地元選手のごとく、ショットを決める際も、クラブを選ぶ際も、迷いが感じられないプレーぶりを披露していた。
それも父親からの教えに従ったからだそうで、フォックスは、こんな逸話を明かしていた。
「ハードワークを重ねていれば、いざという場面で迷うことはない。ハードワークを重ねていなければ、ああなったらどうしよう、こうなったらどうしようと、あれこれ迷いが生じる。ハードワークこそがすべてであることを、僕は父から叩き込まれながら育った」
ロイヤルバークデールで挙げたこの全英オープン初勝利は、「ハードワークが実った」と、フォックスは振り返った。(舩越園子/ゴルフジャーナリスト)
舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。
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