- ゴルフのニュース|総合ゴルフ情報サイト
- 記事一覧
- ツアー
- 「相当変わったのが今年のオフ」馬場咲希“覚醒への軌跡”をコーチ、トレーナーが証言
17歳で全米女子アマ優勝という服部道子以来37年ぶりの快挙を成し遂げた馬場咲希。その成長の軌跡をコーチやフィジカルトレーナーに証言してもらいました。
小学生時代の練習は“草むしり”から始まった
全米女子アマ選手権を制した馬場咲希選手は、小学校の中学年の頃から米軍横田基地の管理施設である多摩ヒルズゴルフコース(東京都)で腕を磨きました。馬場選手にゴルフの手ほどきをしたプロゴルファーの藤井誠氏(現ザ・プレミアムバックステージGM)は、そのいきさつを、こう振り返ります。
「僕が水曜日の夜にレッスンしていた国立南ゴルフセンター(東京都国立市)に『見てください』とやって来たのが最初でしたね。その頃、自治体と協力して小学生を集めてやっていたゴルフ体験教室の『多摩キッズ』の中で、特に熱心な子たちを『もうちょっとやりたいんだったら頑張ろう』と、少人数を集めて指導していたんです。そこに同じくらいの子がいたんで、咲希も入れてあげたんです」
練習メニューは「(コースを貸してくれている)米軍の人たちに可愛がられることが大事」(藤井さん)という考えもあり、「朝はまず草むしり。その後は練習場の裏の邪魔にならないところでバランス系のトレーニングをしたり、サッカーの真似事をしたり。ロッジまでの往復4キロの道を必ず走って、タイムも取っていました。そういう体力トレーニングをやってから、ご飯を食べて、午後2時から担ぎでハーフをやるというメニューでした。もう、くたくたですよね(笑)。で、親がラウンドについてくる場合は子供たちからは離れて、目土をしてもらいました。そのうちに多摩キッズが来ると、ゴルフ場がきれいになっていることにみんなが気づいてくれて、子供たちがうまくなってくると米軍の人たちも『がんばれよ』という感じになっていきました。だから今回の咲希の情報は当然みんな知ってくれていて、メチャクチャ喜んでくれています」
多摩キッズの活動を、縁の下で支えるボランティアの存在もあったことも、見逃せません。
「私が環境作りをしたのは事実ですが、その芽をすくすくと育てたのは、村本達也さんです。私がゴルフ場の業務で100%関わることができない中、プログラムが始まった頃からボランティアとして献身的にサポートしてくれました。 村本さんの活動があったから、多摩キッズが存続しているのは間違いありません」と、藤井氏は感謝の気持ちを述べていました。
多くの大人のサポートを受けて成長してきた馬場選手がここにきて一気に力を付けた原因は、他にもあります。藤井さんは昨年2月、もともと縁の深い内藤寛太郎プロを通じて、馬場選手を紹介した鎌田貴氏(TK LABO代表)の指導が大きくプラスに作用したことも指摘しました。「ここで受けた体幹トレーニングが、相当効いていると思うんです」。
筋力の発達が始まる“ポストゴールデンエイジ”
わずか1年半とはいえ、馬場選手がTK LABOで指導を受け、劇的に成長したのは確かなようです。鎌田氏が、入門当時からの変化を振り返ってくれました。
「僕のところに来るまで、彼女はそういった専門的なトレーニングはまったくやっていなかった。そこで、まず体幹の動きを内藤プロと一緒にやってみましたが、やはり同じようにはできなかったんです。そこで一気に筋力トレーニングには入らず、例えば腹筋を使える、背筋を使える、という風に、コアを中心とした筋肉を使えるような状態に、というのをメインテーマに続けて行きました。コアから入って、運動連鎖という流れです。
基本的にはすべてのスポーツそうなんですけども、手の先から足の先まで、1つの運動をするには連鎖していきますので、その連鎖を上手にできるようにするところから取りかかりました。ある程度成果が出てきたら、少しずつ本格的な強化の段階にという形で進めて、基本的なところを秋ぐらいまでやっていました。早い段階でそういうことを全部こなしてきていたんで、やっぱり能力高いですよ。メニューにしても1度やったことを確実に覚えていますからね。教えたら、次はもう何も言わなくても、そこはもう自分の中でやっていきますから。
ようやく落ち着いて、本格的に集中してできるようになったのが去年の秋から今年の1月ぐらい。もう既にバット振らせても結構な勢いになってきたので、状態はプラスアルファで少しずつって感じですね。そこで本格的にお尻とか足、下半身を強化していきました。体幹が強くなってくると、どうしても上体に今度負担がかかってきてしまいますから。(最初に)来た時からは相当変わった状態になったのが、今年のオフでしたね。進化のスピードは速いです。本人も『えっ、ここまで来ちゃったの? っていう感じですね』(笑)。
今のタイミングが一番良かったということもありますね。初期発達段階、加速度的に伸びていく年齢なんですね。大体20歳までで、そこからはまあ、強化はできるんですけど、もうすで老化のほうに進んでいく。
そういう意味で言うと、やっぱり20歳までの発育発達段階で、その時その時に合ったものをうまく組み合わせていってあげると、こういう風にビックリするような成果が出る。陸上部に入って陸上で足を鍛えたり、心臓が強くなったりとか、そういうのを自然の中でやって、ゴルフ中心で来たのですけど、幸いにして筋力の発達が始まるポストゴールデンエイジっていう、いわゆる中学校後半から高校にかけてのところでうまく筋トレにも入れたんです。手足の長い体から出てくるスイングっていうのはすごいなと思いました。
思っていた以上の成果がここの3カ月で出てきちゃって、僕のイメージとしてはまだ準備段階だったのに、それでも結果が出てしまった感じなんです。でもその分ケガも怖いし、現時点でもまだまだコツコツやっていかないと」
鎌田さんや藤井コーチ、ボランティアの方々が馬場選手の将来を見据えて、大事に育ててきた姿勢が伝わってきました。
まだまだ発展途上の馬場選手。これからどこまで大きく成長するのでしょうか。その可能性は無限大です。
取材・文/小川朗
日本ゴルフジャーナリスト協会会長。東京スポーツ新聞社「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女メジャーなど通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後独立。東京運動記者クラブ会友。新聞、雑誌、ネットメディアに幅広く寄稿。(一社)終活カウンセラー協会の終活認定講師、終活ジャーナリストとしての顔も持つ。日本自殺予防学会会員。(株)清流舎代表取締役。
最新の記事
pick up
ranking