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ゴルフ史最大級40億円被害の真相(4) 被害者も一枚岩ではなかった…「守る会」代表を襲った嵐のような日々【小川朗 ゴルフ現場主義!】
1000人以上が総額40億円にも上る被害を受けたゴルフ界を激震させた「ゴルフスタジアム事件」。発覚から7年にわたり取材を続けてきたゴルフジャーナリストの小川朗氏が、最終局面を迎えた事件の全貌をリポートします。今回は625人もの被害者たちをまとめ、代表を務めてきた今西圭介さんの思いに迫ります。
集団訴訟の誘いにも「詐欺」を疑う疑心暗鬼の被害者たち
2017年4月。「ゴルフスタジアム被害者を守る会」の立ち上げと同時に、代表世話人の座に就いたのが今西圭介さんでした。前回取り上げた阿部進さん(ALS=筋萎縮性側索硬化症により20年7月4日に死去)は、今西さんから見て日本体育大学の後輩にあたります。同会に入った625人もの被害者たちをまとめ、代表を務めてきた今西さんは、このゴルフスタジアム事件を振り返り、今、何を思うのでしょうか。
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事件の始まりは、九州に住む後輩がかけてきた1本の電話でした。
「ゴルフスタジアムから毎月支払われていた広告掲載料が、ストップしているんです」という知らせに「え?何それ」と答えた今西さんの周辺が騒がしくなるまで、それほど時間はかかりませんでした。
のちに1000人以上、被害額40億円というゴルフ史上まれにみる被害規模の事件は、こうして九州から始まり、一気に全国規模で明るみに出ていくのです。
自らも被害者となった今西さんは、同じく被害者で大学同期の斎藤秀一さんの知人を通じて、太平洋クラブなど多くのゴルフ関連訴訟で弁護団の代表を務めてきた西村國彦弁護士を紹介されます。
「一人で戦っても絶対に(リース・信販会社)にかなわないから、(被害者)みんなでやれるんだったら、できるかもしれないよ」とアドバイスされた今西さんと斎藤さんは、西村弁護士とは旧知の仲だった富士CC(静岡県)の所属プロ・横田亮さんとも協力し、「被害者を守る会」の結成に向けて動き出します。
当時、ゴルフスタジアムの公式ホームページには、契約した練習場名やレッスンプロの名前が掲載されていました。そのリストを今西さんと斎藤さんはすべてダウンロード。「とにかく仲間を作ろう」と、全国1000カ所の練習場やレッスンプロに1軒1軒電話して「一緒にやりませんか」と勧誘することになります。
しかし、騙されたばかりの被害者たちが相手だけに、電話をしてから本題に入るまでがひと苦労。苦笑を浮かべながら、今西さんはこう当時を振り返ります。
「電話に出ると、まず僕に『詐欺やってるんじゃないか?』っていうんです。次に続くのが『なんでうちの電話番号を知ってんだ』と。『そうじゃないんですよ。僕も被害者で、被害者を守る会を作るので、一緒にやりませんか?』っていうまでに10分、20分かかって、『分かりました』って話になるまで30分かかることもありました。被害者たちも不安で、『どうなっちゃうの』と心配だから、しょうがないんですけどね」
誰もがショックを受け、焦り、疑り深くなっていました。そんな被害者の話を聞いていくうち、わが身に降りかかっているトラブルが、とんでもない大事に発展していることを、今西さんたちは知ることになります。
最初の半年は深夜も電話やLINEがひっきりなしに
1000人を超える被害者にすべて連絡を取り終えると、そのうち700人以上が「被害者を守る会」への参加を表明します。他の被害者は名古屋や関西、福岡などでグループを作り、今西さんたちとは別に訴訟活動を展開していきます。
「被害者の中でも活動に熱心な方たちが集まってきて、世話人が決まりました。全国の支部長をお願いしたり、LINEグループを作ったりと、忙しくなりました」
そうした中、メンバーの中で年長者ということもあり、今西さんが代表に。脇を固める副代表も4人体制でいくことが決まります。世話人4人、会計、会計監査が各1人と本部組織も固まりました。さらに全国を10ブロックに分け、各支部長も選出。最終的に625人が参加して、被害者の会がようやく立ち上がることになりました。
弁護団も結成され、代表には当初から相談に乗っていた西村弁護士が決まり、17年4月30日、第1回の総会が行われました。参加した約100人の被害者たちにとって、当面の問題はリース・信販会社への支払いでした。
すでに一部の被害者には督促状が届いているとあって、クレジットカードなどが作れなくなるブラックリストに載ってしまうことの恐怖も、目前に迫っていました。
そんな中、第1陣の11名が5月26日、信販会社に債務不存在を求めて東京地裁に提訴。最終的には8件の訴訟が進行していきます。裁判費用は被害者一人につき着手金が8万円、実費として1万3600円、報酬が経済的利益の8%となっていました。
今西さん自身も800万円近い負債を背負う羽目になりましたが、会員にはそれ以上の被害額となった方もいました。会の活動に熱心だった一人、Kさんは、2000万円近い被害を受け、怒りのあまりバットを持ってゴルフスタジアムの本社に乗り込んだといいます。結局、暴力沙汰には至らなかったものの、誰もが先行きに不安を感じ、怒りのやり場を持て余しながら、会の活動を進めていました。
この頃、世話人たちの忙しさは頂点に達していました。今西代表も、過去6年間のうち、この頃が一番印象に残っているといいます。
「特に最初の半年は死にそうになりました。深夜であろうと、電話やLINEがひっきりなしに入ってくるんです。われわれもボランティアで、日中は仕事もある。最初の1、2年は本当に大変でした。われわれにしても、それぞれが深刻な被害を受けているわけですから」
625人もの会員の中には、当然のことながらいろいろな人がいます。PGAやLPGAの会員だけでなく、大小のゴルフに関連した団体に属しているレッスンプロや工房のクラフトマンなど、多種多様な関連業種の人々がいました。
そうした会員たちが、無報酬で活動している幹部たちに、昼夜を問わずさまざまな相談を持ちかけてきました。その中には暴言を吐く人も少なからずいました。
「最初のうちは黙って聞いていても、そのうちに『いい加減にしろよ!』っていいたくなる人がいっぱいいました。口の聞き方がひどい人もいるし、訳の分からないことをいう人も。僕だけじゃなくて、副代表や世話人の人たちは相当疲弊しました。そういった(ひどい)人たちは1人減り、2人減りとなっていきましたけどね」
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