リーディングエッジの位置でネックの呼び方が変わる
「アプローチ」はスコアをまとめるために、とても重要なショットです。しかし、フルショットのように思い切り振れない分、インパクトでゆるんでしまったりとミスが出やすくなる難しいショットでもあります。そのため、アプローチに苦手意識を持つゴルファーも多いのですが、そんな人におすすめしたいのが「グースネック」のウェッジです。

グリーンを狙うショットをミスしたとしても、その後のアプローチさえうまくいけばパーをセーブできるのがゴルフというスポーツです。それだけにプロや上級者になるほど、アプローチを打つ「ウェッジ」に強いこだわりを持っています。
では、ウェッジを選ぶ上で気にするべきポイントとは何なのでしょう? 「ロフト角」や「ソール形状」「バンス角」など、さまざまなポイントがありますが、ダフリやトップを防ぐという意味で注目してほしいのが「ネック形状」です。
ウェッジのネック形状は、アドレスした際に、ネックの左端に対して、リーディングエッジ(ボールに対してフェースの先端に当たる、いわゆる「刃」の部分)がどの位置にあるかで呼び方が変わります。明確な決まりがあるわけではないですが、リーディングエッジがネックの左端に近いほど「ストレートネック」、後方に行くほど「グースネック」と呼ばれます。(少しだけ後方に位置する「セミグース」といった呼び方も存在します)
このネック形状の違いは、リーディングエッジの刺さりやすさやソールの滑りやすさに大きく影響します。
ゴルフのスイングは、どんなショットも基本的に振り子運動です。落下しながら最下点に向かい、そこを過ぎると今度は上昇していくわけです。この振り子運動をシャフトとヘッドに分けて、それぞれの動きをイメージするとそれぞれのネック形状の特性が見えてきます。
まず「ストレートネック」は、シャフトとヘッドがほぼ同じタイミングで動くため、シャフトが最下点に来たところでソールも地面に到達します。つまり、リーディングエッジが下方向に動きやすく、芝に潜ったボールを打ちたいケースなどでは力を発揮する一方で、ちょっとのミスで地面に刺さりやすくもなります。つまり、プロのようにヘッドの入射角が安定していれば、クリーンにボールを打ちやすいネック形状ですが、ミスにはあまり強くないと言えます。
一方、「グースネック」はシャフトよりもヘッドが遅れて動きます。そのため、シャフトが最下点を過ぎて上昇を始めたタイミングでソールが接地しますので、リーディングエッジは下ではなく、前方に動きやすくなります。「ストレートネック」に比べて、リーディングエッジが刺さるリスクがかなり小さくなり、少しくらいヘッドの入射角がズレても、ボールをキッチリ拾ってくれます。ミスへの強さという意味では、「グースネック」に明らかなメリットがあるわけです。
もし、グリーン周りでのダフリやザックリで悩んでいるなら、ぜひグースネックのウェッジを試してみていただきたいです。最初は独特な顔に戸惑うかもしれませんが、慣れさえすれば大きな武器になるでしょう。
グースネックはゴルフ界から消えかけたことがある

このようにミスへの強さという意味で大きなメリットがあるグースネックのウェッジですが、これまで脚光を浴びたり、逆に消えかけたりと波瀾万丈な歴史を辿ってきました。
まず、グースネックのウェッジは、日本男子ツアー94勝を誇るレジェンド、尾崎将司プロが愛用したことで脚光を浴びました。ボールを低く打ち出し、強烈なスピンをかけてピンそばに止める魔法のようなアプローチは当時、多くのゴルファーにとって憧れの的でした。
そんな尾崎プロの影響もあり、国内メーカーから発売されるウェッジにはグースネックが採用されることが多くなったわけです。
一方で、その隆盛も長くは続きませんでした。タイガー・ウッズ選手を始めとする米国のトッププロや日本の丸山茂樹プロが、ストレートネックのウェッジを駆使して勝利を重ね始めると一般ゴルファーの興味がグースネックから離れていったのです。2000年代になると、国内外のメーカーから単品発売されるウェッジのほとんどがストレートネックのモデルに置き換わり、グースネックはほぼ市場から消えたような状態となりました。
そんな中で現代に話を移すと、グースネックの性能的優位性の高さを見直すメーカーが増えてきています。たとえばフォーティーンからは「TK-40フォージド」という強烈なグースネックのモデルが発売されるなど、市場で再び脚光を浴び始めています。
今後は、ストレートネックとグースネックのどちらか一方が流行するのではなく、ウェッジのバリエーションとして両者が共存することになるかもしれません。ぜひこの機会に本当に自分に合ったネック形状は何か、改めて考えてみてはいかがでしょうか。