ゴルフ場の「IN」と「OUT」本当の意味知ってる? 日本が9ホールでクラブハウスに戻るのは“緯度のせい”!?

日本のゴルフ場では、1番ホールからスタートする組と10番ホールからスタートする組に分けられることがほとんどです。どのような目的で2種類のスタート方法があるのでしょうか。

古典的なレイアウトでは9番や10番はクラブハウスから一番遠いところにある

 18ホールをプレーするゴルファーは前半の9ホールを終えた後は昼休憩に入り、後半から残りの9ホールに向かうのが、北海道と沖縄を除いた日本のゴルフ場の一般的なスタイルです。

 1番ホールから9番ホールまでは「OUTコース」、10番ホールから18番ホールまでは「INコース」と呼ばれますが、約半数の組はINコースからスタートします。ビギナーのなかには、1番ホールから数字の順番通りにラウンドするわけではないことを不思議に思った人も多いかもしれません。

セントアンドリュース・オールドコース18番をプレーするローリー・マキロイ。一度スタートしたら1ラウンドを終えるまでこの景色を見ることはない 写真:GettyImages
セントアンドリュース・オールドコース18番をプレーするローリー・マキロイ。一度スタートしたら1ラウンドを終えるまでこの景色を見ることはない 写真:GettyImages

 では、なぜINスタートとOUTスタートの2通りのプレー方式が存在するのでしょうか。ゴルフ場の経営コンサルティングを行う飯島敏郎氏(株式会社TPC代表取締役社長)は以下のように話します。

「海外ではスループレーで1番からスタートし、18番をホールアウトしないとクラブハウスに戻ってこないケースも珍しくありません。OUTは『ゴーイングアウト』、INは『カミングイン』という言葉の略称なので、セントアンドリュース・オールドコースをはじめとした古典的なコースレイアウトだと、18ホールの真ん中に当たる9番ホールや10番ホールはクラブハウスから最も遠く離れた場所に位置しています。9番ホールを頂点にして、10番ホールから再びクラブハウスに戻ってくるのが由緒正しいルートなのです」

「しかし、世界各地にさまざまなゴルフ場が造られていく中で、9ホールずつで一旦クラブハウス近辺に戻る形のコースが多数登場し、次第に定番になってきました。そして日本では、そのコースレイアウトが日照時間の関係で非常にマッチしていたのです」

「スコットランドの場合、緯度が高いため夏は夜になってもずっと明るく、夕方の4時ごろからスタートしても18ホールを回ることができます。そのため、全員が1番ホールから順繰りにラウンドを始めていってもまったく問題がありません。一方、日本の場合は夏でも19時頃には暗くなってしまってプレーできる時間に限りがあるので、多くの人にゴルフを楽しんでもらえるようにOUTとINの同時スタートとし、途中休憩で時間調整を行いながら後半は入れ替わる形式が主流となりました」

1番を“序章”とし18番までにクライマックスを迎えるのが元来のコース設計

 ところが飯島氏は、コースレイアウトを第一に考えると1番からスループレーをするのが望ましいと話します。

「元来のコースレイアウトは、1番から18番までを一つの『物語』を描くように造られています。最初の方は『序章』として難易度を低くし、気持ちよくスタートを切ってもらえるような設計になっています。対して、14番ホールあたりから先は難しさが一気に増していき『クライマックス』へと突入していくのです。そのようなコースでINからスタートすると、前半の中盤からいきなりクライマックスが訪れてしまうことになります。そのため、設計家の意図がより体感できるのはOUTスタートだと思います」

 日本では二手に分かれてスタートし途中にハーフタイムを入れるスタイルが、ゴルフ場側から見れば客単価が上がり、プレーヤー側から見れば休憩と食事ができるので「ウィン・ウィン」の関係を築けるとされてきました。

 しかし最近では、海外でプレーする機会が増えたりコロナ禍でスループレーを採用するコースが登場したことで、途中休憩を挟んでせっかく整ってきた流れが途切れてしまうことに不満を覚え始めたゴルファーも少なくありません。
 
 とはいえ、OUTとINに分かれてスタートし、ハーフターンでゆっくり昼食をとるのは日本ならではのゴルフ文化ともいえます。コースが空いているときは、前半の調子を維持してスルーで回りたい人はそのまま後半ハーフへ、同伴者との会話を弾ませながらのランチも楽しみという人はレストランへ、というようにフレキシブルな対応をとってくれるゴルフ場が増えるのが理想かもしれません。

【写真】「今日は9フィートです」って本当に意味分かってる? グリーンスピードの測り方を見る

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これがグリーンキーパー御用達の計測器「スティンプメーター」。USGAの認証マークがついており、世界中のコースが同じ基準で計測されている
これがグリーンキーパー御用達の計測器「スティンプメーター」。USGAの認証マークがついており、世界中のコースが同じ基準で計測されている
1.金属製「スティンプメーター」の端の方にある穴にボールをセットする。「スティンプメーター」はV字にへこんだレールになっている
2.ボールがセットされた方の端をゆっくり持ち上げていく。一定の高さ(角度にして約20度以上)に上がり、ボールがレールを転がり始めたら手を止める
2.ボールがセットされた方の端をゆっくり持ち上げていく。一定の高さ(角度にして約20度以上)に上がり、ボールがレールを転がり始めたら手を止める
2.ボールがセットされた方の端をゆっくり持ち上げていく。一定の高さ(角度にして約20度以上)に上がり、ボールがレールを転がり始めたら手を止める
3.ボールがどれだけ転がったかを計測する。ボールが「スティンプメーター」を出てから止まった位置までの距離がグリーンスピードの指標となる
4.距離の計測は、メジャーを用いるか、「スティンプメーター」を物差しとして使うこともできる。距離をフィートで表した数値をそのままボールスピードとして表示する
セントアンドリュース・オールドコース18番をプレーするローリー・マキロイ。一度スタートしたら1ラウンドを終えるまでこの景色を見ることはない 写真:GettyImages

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