天空を吹き抜ける海風の“空中ハザード”が妙味「大洗ゴルフ倶楽部」
日本を代表するコース設計家・井上誠一。日本特有の感性が宿る彼の設計コースは、時を超えてゴルファーたちを魅了し続けています。そこで今回は、年間プレー数が200回を超えるゴルフ会員権業者である、わたくし前田信吾が独自の目線でBEST3を紹介したいと思います。
まず最初に挙げるのは、茨城県にある大洗ゴルフ倶楽部です。大洗GCの魅力は、決して一言で語り尽くせるものではありません。あえて語るならシーサイドコースならではの海風、雄々しい黒松林群、砂丘地特有の砂などの自然が持つ美しさ、力強さを余すところなく生かしたコースデザインにあるといえるのではないでしょうか。
僕が考える “いいコース”の条件の一つに「メモラビリティー」の高さがあります。
これはコースを構成する18ホールが、戦略性や趣、そして次のホールへと向かう流れなどが各々記憶に留めやすいかどうかということです。ここ大洗GCは日本屈指の「メモラビリティー」の高さを誇る素晴らしいコースだと思います。
全長約7200ヤードで構成された18ホールすべてが鮮明に記憶に残り、プレーするたびに新しい発見があるのです。さらに、プレー回数を重ねるほど美しく力強いコースレイアウトに魅了され、一筋縄ではいかない難しさを感じる稀有なコースでもあります。
特筆すべきは、やはり大洗GCの代名詞ともなっている“空中ハザード”ですね。
例えば、フェアウェイよりも高い位置にあるグリーンを狙う状況にあるとしましょう。大洗GCでは、とてもいい塩梅でグリーンへのアプローチエリアに黒松が配されており、松の枝が視覚的に自然のハザードとなっているんですね。ボールの落としどころによっては、とても難しいショットを強いられるのです。
それに、ひとたびバンカーに入れてしまうとグリーンまでの距離が思いのほか遠く、またバンカーの上には覆いかぶさるように枝を伸ばした松の木が視界を遮ります。このようなゴルフ場を、僕はほかには知りません。
ただでさえ難しいコースなのに、さらに雨が降ったり風が強いと100叩いちゃうこともあります。それでも、本当に悔しい思いが残る一方で「またチャレンジしたい!」と心から思わせてくれる素晴らしいコースです。
<コースデータ>
大洗ゴルフ倶楽部
18H 7205ヤード パー72
茨城県東茨城郡大洗町磯浜町8231-1
日光特有の風情と自然が織りなす起伏に脱帽「日光カンツリー倶楽部」
僕は昨年、日光CCで20回ほどプレーさせていただきました。昨年は通算で219回プレーしたので、約1割をこの日光で楽しませていただいた計算になります。
なぜ僕がこれほどまでに「日光CCが好きなのか?」といいますと、コースレイアウトが素晴らしく、グリーンの状態が秀逸であることはいうまでもありませんが、何より心を動かされるのは、小川のせせらぎを聴きながら男体山を愛でるという、日光CCにしかない特別な風情に満ちているからであります。
日光CCが建設される以前は、この辺りは大谷河原の大きな石が転がる荒れた土地だったそうです。コース設計を託された井上誠一は自然豊かなこの地を選び、自生する赤松やモミの木など、日光ならではの樹木を自然のハザードとしてコースデザインに生かしました。
自生する樹木は成長するにつれ、やがて根を張り、枝を伸ばす。こうして伸びた枝が空中のハザードとなり、地中に張り巡らされた根が見事な起伏を作り出しているのです。
日光CCのフェアウェイは、見た目は平らでも起伏が効いていて、ちょっと見たぐらいではよくわかりません。だからボールの落としどころを間違ってしまうと、いいスコアを出すことはできません。
まわればまわるほど、その難しさゆえに味わいも深まる。日光CCには、そんな魅力があります。
遠くに臨む男体山や日光連山を背景に、四季折々の大自然を愛でながら真摯にゴルフと向き合う。限られた人生なかで、こんなに恵まれた時間を過ごすことができるゴルフ場はそうそうないと思います。
<コースデータ>
日光カンツリー倶楽部
18ホール 7236ヤード パー72
栃木県日光市所野2833