なぜ渋野日向子と西村優菜はラインを読むときグリーン上で両足を広げている?

多くのツアープロのコーチとして活躍している石井忍氏が、“ここはスゴイ”と思った選手やプレーを独自の視点で分析します。今回注目したのは、米女子ツアー「アニカ・ドリブン・バイ・ゲインブリッジ・アット・ペリカン」に出場した渋野日向子(しぶの・ひなこ)と西村優菜(にしむら・ゆな)です。

年間ランキング83位でシード喪失の渋野日向子

 米女子ツアー「アニカ・ドリブン・バイ・ゲインブリッジ・アット・ペリカン」は、リリア・ヴ選手の優勝で幕を閉じました。ヴ選手は、今年2月の「ホンダLPGAタイランド」でツアー初勝利を挙げると、4月の「シェブロン選手権」でメジャー初優勝。また、8月の「AIG(全英)女子オープン」も制し、今年だけで4勝、うちメジャーで2勝を挙げています。

 今大会を終え、ヴ選手のCMEポイントランキングは2位。1位のセリーヌ・ブティエ選手を僅差で追っています。残すは今週開催のシーズン最終戦のみ。上位60人だけが出場できる「CMEグループ ツアー選手権」で年間最優秀選手が決定します。

 日本勢は、勝みなみ選手が7位タイ、西村優菜選手が51位タイ、渋野日向子選手が61位タイ、古江彩佳選手が予選落ちでした。

来季のフルシード権を喪失した渋野日向子(左)と獲得した西村優菜 写真:GettyImages
来季のフルシード権を喪失した渋野日向子(左)と獲得した西村優菜 写真:GettyImages

 同大会を終え、年間ポイントランキングは、勝選手74位、西村選手49位、渋野選手83位、古江選手10位。また、今大会に出場していなかった笹生優花選手は16位、畑岡選手は19位。ポイントランキングで80位以内に入った古江選手、笹生選手、畑岡選手、西村選手、勝みなみ選手は来シーズンのシード権を手に入れました。

 一方、83位でシーズンを終えた渋野選手はシード権を喪失しましたが、「ポイントランク81~100位」のカテゴリーに入っています。このカテゴリーは、「最終予選会(Qシリーズ)」のトップ20よりも優先されるため、予選会からの米女子ツアーを目指している西郷真央選手、吉田優利選手、馬場咲希選手がQシリーズで上位に入った場合でも、渋野選手のほうが多く試合に出場できることになります。

「両足を広げてラインの読む」動作のポイントは?

 さて、「アニカ・ドリブン・バイ・ゲインブリッジ・アット・ペリカン」の最終日は、西村選手と渋野選手が同組でした。2人はグリーン上で同じ動作をしているのをご存じですか。それは、ラインをまたぐ動作。カップと正対しながら、両足を広げてラインをまたぎ、足裏で傾斜を感じています。

 最近は多くのプロが取り入れているラインの読み方なので、中継で見たことがあるという人もいるはずです。この動作のポイントは、どこでラインをまたぐか。グリーンは一枚の板が斜めになっているような一方向の傾斜ではなく、細かな起伏があるもの。ですから、カップ際、ボールとカップの中間、ボールの近くなど、複数個所の傾斜を感じることで、より正確にラインをつかむことができます。

 このライン読みは慣れていないと時間がかかってしまうので、取り入れる場合は練習グリーンでスムーズにラインが読めるように練習しておくといいでしょう。

渋野 日向子(しぶの・ひなこ)

1998年生まれ、岡山県出身。2019年のAIG全英女子オープンでメジャー初制覇。同年は国内ツアーでも4勝をマークし、賞金ランキング2位という成績を残した。2020-21シーズンは、「スタンレーレディスゴルフトーナメント」と「樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント」で勝利。22年から米ツアーを主戦場に戦っている。国内ツアー通算6勝。サントリー所属。

西村 優菜(にしむら・ゆな)

2000年生まれ、大阪府出身。19年のプロテストに合格し、翌年の「樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント」でプロ初勝利。21年は「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」でメジャー優勝を飾るなど、年間3勝をマーク。2020-21シーズンは賞金ランキング5位と躍進。22年は2勝を挙げて、通算勝利数を6とした。今季は米女子ツアーに参戦。スターツ所属。

【解説】石井 忍(いしい・しのぶ)

1974年生まれ、千葉県出身。日本大学ゴルフ部を経て1998年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くの男女ツアープロを指導。「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアにもレッスンを行う。

【動画】ギュギュ、ピタ! 西村優菜のスーパーアプローチ実際の映像 ※動画は写真5枚をスライドした後に

【画像】「ウォルマートNWアーカンソー選手権」で米ツアー自己最高の3位タイに入った西村優菜

画像ギャラリー

「ウォルマート NW アーカンソー選手権」を通算15アンダー・3位タイで終えた西村優菜 写真:Getty Images
「ウォルマートNWアーカンソー選手権」で米ツアー自己最高の3位タイに入り、来期シードをほぼ手中にした西村優菜 写真:GettyImages
来季のフルシード権を喪失した渋野日向子(左)と獲得した西村優菜 写真:GettyImages
1 2 3

最新記事