「もう日本が海外という感覚はありません」
ボミさんにとって日本はどのような場所ですか?
「第2の故郷というよりも、もう日本が海外という感覚はありません。それくらいさまざまな場所に行き、知り合いもたくさんでき、たくさんの日本のファンに支えられたと感じています。日本に来たことで、自分の人生が大きく変わったので、日本がとても好きですし、本当に感謝しきれないくらいです。心残りなのは、私が日本に来てからも、長らく日韓関係があまり良くないことで、そこはずっと心に引っかかっています」
日韓の情勢についても常に気になっていたのですね。
「韓国人として、私の行動や発言一つで誤解を招いたりすることもあるので、そのあたりの発言はとても慎重になっていました。歴史について知ることは大事だと思いますが、これから先、お互いに負の感情を持ちながら生きてはいけないと思います。私自身、日本からたくさんの愛情を受けてきましたし、これから日本でも活動をすることもあります。日本と韓国はこれからもっといい関係になってほしいし、なれると思っています」
最後に、「日本で一番愛された韓国人」と表現されることもあるようですが、人に好かれる秘訣があれば教えてください。
「自分のほうが偉いとか、相手のほうが下だとか、そんな視線で人をみるのではなくて、相手と同じ目線で接するマインドが必要だと思います。もう一つは、人が好きであることと、人を尊重することだと思います」
常にそれを心掛けていたということでしょうか?
「私が賞金女王になったから、偉いのかといえばそうではありません。韓国語に『相扶相助(サンブサンジョ)』という言葉があるのですが、これは『持ちつ持たれつ』という意味です。例えば、私のことを扱ってくれるメディアの方たちがいるからこそ、みなさんに知ってもらえます。よく報じてくれることで、私のイメージもよくなります。そうなると、私ももっと積極的に発言しようという気持ちになりますよね。それに仮に不愛想にメディア対応したら、それが記者の間で噂に立つことも想像できますよね。毎週、会場でお会いする人がいて、顔見知りなら声を一言かけたり、『ご飯は食べましたか?』(パブモゴッソヨ?/韓国ではあいさつ代わりに使われる表現)と聞いたりするのが自然なことだと思っています」
そうした積み重ねが愛される秘訣なのかもしれませんね。
「最近はこんなことを考えることがあります。人は一度きりの人生で、私もいつ死ぬかわかりません。それであれば、ある人との出会いがたった一度しかないなら、その方には私の記憶がいいものとして残ってほしいと思うんです。そんなことを考えながら今は人と接しています」
今シーズンが終わってからは、どのように過ごすか思い描いていることはありますか?
「どのような人生を生きていくかは、一つの悩みでもありますよね。私にどんな仕事が向いているのか、どんなオファーが来るのか、まだ想像もつきませんが、もう少し悩みながら前に進んでいきたいと思っています。3月に開設したYouTube「BomeeChannel」も活動の一つなので、楽しみにしてください。
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こうしてイ・ボミの肉声を聞けば聞くほど、今季限りで彼女のプレーが見られなくなってしまうことへのさびしさが募る。しかし、ボミは時に迷い、時に悩みながらも、最後にはきっと、あの太陽のような屈託のない笑顔を見せ、日本と韓国のかけ橋になり続けてくれるに違いない。これからボミが日本と韓国でどんな第2の人生を見せてくれるのか、楽しみにしていよう。
イ・ボミ
1988年8月21日生まれ、韓国出身。2010年に韓国女子ツアー賞金女王となり、11年から日本ツアーに参戦。15年に7勝、16年は5勝して2年連続で賞金女王となる。ツアー通算21勝。19年12月に俳優イ・ワン氏と結婚。23年シーズンをもって日本ツアーからの引退を発表した。愛称は“スマイル・キャンディ”。延田グループ所属。