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- 「あいつだけには勝たせたくない」 ゴルフ場関係者が語るクラチャン連覇に渦巻く感情
クラブ選手権で何度も優勝すれば、誰もが称賛すると思いがちです。しかし、メンバー同士のコミュニティーであるゴルフ場では、強さだけでは語れない複雑な人間関係も存在します。クラチャンを巡る意外な実情を聞きました。
クラチャンを連覇する人はひんしゅくを買うこともある
ゴルフ場のクラブハウスに入ると、クラブ選手権の歴代優勝者の名前が刻まれたボードを見かけることがあります。そこに並ぶ名前を眺めていると、「この人、5連覇しているのか」「3連覇した後、また数年後に優勝しているな」と驚かされることがあります。
クラブ選手権は、メンバーシップコースで一年に一度開催される、そのコースで最も強い選手を決める競技です。予選ラウンドは18ホールまたは36ホールのストローク競技で行われ、上位16名が決勝ラウンドに進出します。
決勝ラウンドはトーナメント方式のマッチプレーで行われ、準々決勝までは18ホール、準決勝と決勝は36ホールで勝敗を決めるのが一般的です。優勝すると「クラチャン」(クラブチャンピオンの略称)と呼ばれ、クラブハウスに名前が掲示されます。
その名前を見て最初に感じるのは「この人は強いんだな」という率直な印象です。ただ、同時に少し気になることもあります。「同じ人が何度も勝って、他の人たちはどう思っているのだろうか」という心配です。

クラブ選手権を連覇している人は、他のメンバーからひんしゅくを買ったりしないのでしょうか。ゴルフ場関係者に率直な意見を聞いてみました。
「『ひんしゅくを買う』というよりも、“ひがみ”みたいなのはありますよね。『あの人、ゴルフはうまいんだけど、人間的にどうなの?』みたいなことを言われることはあります」
「ゴルフは個人競技ですから、周りを気にしないタイプの人が強かったりするんですよ。それと、クラチャンになるにはお金も時間もかかりますから、個人で会社を経営している人が多いです。自分で会社をやっている方はだいたい個性が強いですからね」
「一方で、ゴルフクラブは会員組織です。組織の上にいる人たちは、協調性やバランスを重視します。だから『あいつだったらしょうがないね』という人だったらいいですけど、『あいつだけには連覇させたくない』みたいな話は、よくありますよ」
クラブ組織は単なる“競技施設”ではない
筆者はかつて、ゴルフ雑誌でクラブチャンピオン経験者を取材する連載に携わったことがあります。彼らに話を聞くと、みなさん並々ならぬ努力をしています。仕事の合間を縫って練習を重ね、年間を通してコンディションを整え、クラブ競技に合わせて生活を組み立てている人もいます。
ただ、その経歴をうかがうと、ジュニア時代から高いレベルで競技ゴルフに取り組んでいた人や、学生時代に野球など他のスポーツでトップレベルを目指していた人も少なくありません。プロ野球選手を目指していたものの途中で断念し、その後、ゴルフにのめり込んだという人もいました。クラブチャンピオンという称号は、「大人になってから努力した人が誰でも平等にたどり着ける場所」とは少し違います。
ゴルフは身体能力だけですべてが決まる競技ではありません。技術力や精神力を磨けば、飛距離で勝る相手に勝つこともできます。ただ、完全に平等な競技というわけでもありません。心技体を総合的に使うスポーツである以上、「向いている人」と「向いていない人」、「有利な人」と「不利な人」が存在するのも事実です。
クラブ選手権は“競技”です。ルールに従ってプレーし、スコアが良かった人が勝つ。極めてシンプルな仕組みです。しかし、メンバーシップコースは単なる競技施設ではありません。長年通うメンバー同士のコミュニティーでもあります。
つまり、クラブ選手権を巡る空気には、「競技者としての強さ」と「共同体の中での振る舞い」という、二つの価値観が同時に存在しています。そこには承認欲求や憧れ、嫉妬、人間関係、共同体意識など、さまざまな感情が混ざり合っています。だからこそクラブ選手権には、“競技結果だけでは割り切れない空気”が生まれるのでしょう。
文・保井友秀(やすい・ともひで)
1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーライターとしての活動を開始。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。現在はゴルフ雑誌やウェブサイトなどで記事を執筆している。
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