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「そこから打つの!?」 全英史に残る“練習場ドロップ” スピースがメジャーを引き寄せた“奇跡のリカバリー”
PGAツアーの解説も務めるゴルフスイングコンサルタント・吉田洋一郎氏が、ツアーの第一線で活躍する選手のプレーを独自の視点で分析。今回は、2017年の「全英オープン」を制したジョーダン・スピース選手が、最終日の13番で見せた“奇跡のリカバリー”を振り返ります。
優勝を引き寄せた“ボギー”の価値
7月16日から開催される「全英オープン」。舞台となるロイヤルバークデールGCで大会が行われるのは、ジョーダン・スピース選手が優勝した2017年大会以来です。
2017年大会といえば、スピース選手が見せた“奇跡のリカバリー”は今も語り草となっています。
2位に3打差をつけて迎えた最終日。前半は1バーディー、4ボギーとスコアを落とし、マット・クーチャー選手に首位で並ばれます。通算8アンダーで並んで迎えた13番(パー4・499ヤード)、スピース選手のティーショットは大きく右へ曲がり、砂丘の斜面にある深いラフへ。ボールは見つかったものの、1打で脱出するのは難しい状況でした。

スピース選手は丘の上に立ってコースを見渡し、「隣の練習場から打てるのか?」と確認した上でアンプレヤブルを宣言。1罰打を加え、13番ホールのカップと元のボール位置を結んだ後方線上となるドライビングレンジ内にドロップしました。
そこから放った3打目はグリーン手前まで運び、アプローチで約3メートルに寄せてボギー。大きなトラブルを最少失点で切り抜けます。
13番でパーをセーブしたクーチャー選手に首位を譲りましたが、スピース選手は14番でバーディー、15番でイーグルを奪うと、16番、17番も連続バーディー。終盤4ホールで5つスコアを伸ばし、通算12アンダーでメジャー3勝目を挙げました。
目指すべきは「奇跡のパー」より「最少失点」
当時のティーショットを見返すと、優勝争いのプレッシャーからか、スピース選手は明らかに振り遅れていました。ダウンスイングでシャフトが地面と平行になる位置では、ヘッドが遅れてクラブフェースが開いているのが分かります。
力が入る場面では、手元が先行してヘッドが遅れ、右へ大きくミスしやすくなります。一般ゴルファーでも、「右の林の奥まで打ち込んでしまった……」という経験がある人は少なくないでしょう。
ティーショットを林へ打ち込んでしまったときに、まず考えたいのは傷口を広げないこと。「奇跡のパー」を狙うのではなく、スピース選手のように「いかに最少失点で切り抜けるか」というコースマネジメントを意識することが大切です。
木の隙間を狙うショットは、方向性だけでなく球の高さもコントロールしなければなりません。2打目で無理にグリーン方向を狙うのではなく、真横や後方の広いスペースへ確実に出し、3打目でグリーンを狙う方が結果的にスコアはまとまりやすくなります。
また、真横や後方へ出す際も、ただ打つだけでは手前の芝に食われて止まったり、反対側のラフまで転がったりすることがあります。ボールを止める場所を決めてからレイアップすることが重要です。
林からのショットでは大きめの番手を持ち、小さめの振り幅で打つと打点がブレにくくなります。また、ヘッドを上から打ち込むようなスイングは緩みやすいため注意が必要。小さい振り幅でも「バックスイングは小さめ、フォローは大きめ」を意識すると、ヘッドが加速し、クリーンにボールをとらえやすくなります。
大きなミスをしても、最少失点で切り抜けることができれば流れを引き戻すことは可能です。1ホールで取り返そうとせず、18ホールを通してスコアをつくる意識を持つことが、大叩きを防ぐポイントといえるでしょう。
【解説】吉田 洋一郎(よしだ・ひろいちろう)
1978年生まれ、北海道出身。世界のゴルフスイング理論に精通するゴルフスイングコンサルタント。デビッド・レッドベターから世界一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。毎年数回、米国、欧州へ渡り、ゴルフに関する心技体の最新理論の情報収集と研究活動を行っている。欧米の一流インストラクター約100名に直接学び、世界中のスイング理論を研究している。海外ティーチングの講習会、セミナーなどで得た資格は20以上にのぼる。
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