ゴルフカートは国産メーカーでも「左ハンドル」理由は諸説あるけど本当は?

山岳部や丘陵地にゴルフ場があることの多い日本では、ラウンド時の移動手段として乗用カートがよく使用されますが、日本製でも「左ハンドル」の仕様になっています。その理由は何なのでしょうか?

自走式と電磁誘導式があるゴルフ用カート

 ラウンド中、移動による疲労を軽減し、プレーファストにも役立つゴルフ用乗用カート。日本では、セルフプレーが主流になってきた2000年代に入ってから普及が大きく進み、今では当たり前の存在となりました。

洋の東西を問わずゴルフカートは左ハンドル

 ゴルフ用のカートでは、乗用車と同じ要領でゴルファー自身が運転する「自走式」と、スイッチやリモコンを押すだけで自動運転を行う「電磁誘導式」の2種類があります。

 カートが導入され始めた頃は、自走式がほとんどでしたが、最近では電磁誘導式を導入するコースも増えています。ゴルファーにとっては、より便利にラウンドが楽しめる環境が整ってきたと言えるでしょう。

 地中に埋められた誘導線からの磁力を感知し、設定されたルートを自動走行する電磁誘導式カートですが、カギがあれば自走することも可能です。そのため、自走式も、電磁誘導式もハンドルがつけられていますが、気になるのはいずれも「左ハンドル」だということです。

 日本の乗用車は右ハンドルが一般的で、左ハンドルは一部の輸入車のみに限られます。日本のゴルフ場で使用されるカートの多くはヤマハなどの国産メーカー製ですが、基本的には左ハンドルが採用されています。右ハンドルに慣れているところで、ゴルフ場で急に左ハンドルを運転することになり、戸惑った経験をお持ちの人もいるかもしれません。

 ゴルフ用のカートが左ハンドルである理由の1つとして、導入された当初「海外から輸入されてきたものだったこと」が挙げられます。

 ハンドルの位置は、一般道を走る自動車の場合、海外のほとんどの国ように右側通行であれば左ハンドル、日本のように左側通行であれば右ハンドルになるのが一般的です。しかし、ゴルフ場は基本的に一方通行。対向車が来ることはほとんどないため、あえて日本向けの右ハンドルを開発する必要がなかった可能性もあるでしょう。

構造上、右ハンドルだと運転しにくい

 ゴルフ用カートの場合、構造的な理由から左ハンドルにする必要もあるようです。ヤマハ発動機のゴルフカー部門の担当者は以下のように話します。

「ゴルフカートは、一般的な自動車と異なり、構造上、足元にタイヤがあります。そのため、乗員の足元にタイヤが張り出してしまい、一般的な自動車と同じ位置にアクセルとブレーキを配置することができません。どうしても、車体の中央寄りに配置することになるため、右ハンドルにすると、右足で操作するには体をひねる必要が出てきます。操作性が悪く、安全性に問題が出てくるため、日本国内向けであっても、左ハンドルが採用されているわけです」

 ハンドルを車体の中央に配置する「センターハンドル」も選択肢に挙がりそうですが、ゴルフは基本的に4人で行うスポーツです。前席と後席に2人ずつ座ることを想定すると、センターハンドルでは前席に1人、後席に3人が詰めるような形になり、ゆったりしたプレーのためには不向きだと言えるでしょう。

 ゴルフ場では、毎年のようにカートによる事故が発生しています。その原因の多くはゴルファーの操作ミスです。

 一般的な自動車よりもスピードが遅いこともあり、ゴルフ用カートの運転は油断しがちです。しかし、日本のゴルフ場は山岳部にあり、アップダウンが激しいことが多く、横幅の狭いカート道路も多く存在します。そうした場所では、ちょっとした操作ミスでも大きな事故につながる可能性があるため、カートの操作性はとても重要です。

 その意味で、左ハンドルが採用されていることには大きな意味があると言えるでしょう。カートを運転する際には、メーカーの「ゴルファーに快適かつ安全にゴルフを楽しんでもらいたい」という意図をしっかり理解し、安全運転を心がけましょう。

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