ホールインワンした本人が自腹で祝う“謎風習”の起源は? 品格が表れる保険金の“粋な使い方”とは!?

ゴルファーならば一度は経験してみたいホールインワン。しかし、実際に達成した場合、歓喜の直後に打った本人が真っ青になってしまった……。なんていう話もよく耳にします。自腹でお祝いしなければならないのに、ホールインワン保険にはいっていなかった、と。この風習はどのように始まり、その由来や海外での祝われ方はどのようなものなのでしょうか。

記録上最初のホールインワンは1869年の“ヤング”トム・モリス

 ゴルファーならば一度は経験してみたいホールインワン。一撃でボールがカップに吸い込まれ、打った本人のみならずその場に居合わせた全員に歓喜の声が広がる光景は、まさにゴルフならではの熱狂と言えるでしょう。

 しかし、その歓喜の直後、打った本人は真っ青に……。ホールインワンを達成したゴルファーはしばしば自腹でお祝いをしなければならないという謎の風習が存在するからです。この風習はどのように始まり、その由来や海外での祝われ方はどのようなものなのでしょうか。

最近で最も印象深かったホールインワンといえば、全米プロ最終日15番で飛び出した“クラブプロの星”マイケル・ブロックのエース 写真:Getty Images
最近で最も印象深かったホールインワンといえば、全米プロ最終日15番で飛び出した“クラブプロの星”マイケル・ブロックのエース 写真:Getty Images

 歴史上記録された最初のホールインワンは、約150年前に遡ります。スコットランドのプレストウィックGCで開催された第10回全英オープンゴルフ大会(1869年)でのことです。このホールインワンを達成したのは、優勝者であるトム・モリス・ジュニアで、全長166ヤードの8番ホールでのことでした。当時12ホールだったゴルフ場が18ホールに拡張されレイアウトが変わっているため、同じ8番ホールは現存しません。

トム・モリス・ジュニアの4連覇により優勝賞品がベルトからカップに代わったエピソード(左)、プレストウィックGCの全英OPでトム・モリス・ジュニアが手にしたチャンピオンベルトとクラレットジャグ(右) 写真:林郁夫
トム・モリス・ジュニアの4連覇により優勝賞品がベルトからカップに代わったエピソード(左)、プレストウィックGCの全英OPでトム・モリス・ジュニアが手にしたチャンピオンベルトとクラレットジャグ(右) 写真:林郁夫

 当時の全英オープンは毎回プレストウィックGCで行われ、全英オープンは唯一の国際大会(正に“The Open”)でした。この年2度目の優勝を果たした若きトム・モリスは、18歳にしてメジャー大会で初めてのホールインワンをも達成したわけです。その後も勝ち続け、4連覇を達成しました。

 史上初の4連覇を果たしたことで、取り決めにより優勝賞品のチャンピオンベルトは永久にモリスの所有物になりました。優勝者に贈呈すべきベルトがなくなってしまったため、全英オープンは一度中止となります。再開された際、新たに優勝賞品となったのが、現在の優勝杯であるお馴染みのクラレットジャグです。

左上スコアカードの左側中程に「1」、右上の「1869」が消されている 写真:林郁夫
左上スコアカードの左側中程に「1」、右上の「1869」が消されている 写真:林郁夫

 資料を詳しく調査すると、当初、モリスがホールインワンを達成したのは「1868年」と報じられていました。記録の証明となるスコアカードには、手書きの「1869年」の文字が二重線で消され、その上に「1868年」と書き直されています。後の調査により、当日のことを報じた新聞記事の日付が1869年9月23日であったことが明らかになりました。そのため、正確な記録は「1869年」とされています。この事実は、プレストウィックGCのウェブサイトで紹介されています。

もしホールインワンしたら実際何をすればいいの!?

ホールインワンパーティーの始まりは1921年ペブルビーチGL

 ゴルフの本場スコットランドでは、ホールインワンを達成したゴルファーがボトル1本のスコッチウイスキーを買い、周囲の人々に振る舞うという風習があります。この風習に関して、クラブハウスのバーの入り口にたくさんのショットグラスと一緒に置かれたボトルの写真が時折SNSで見かけられます。

 しかし、ホールインワンを達成したゴルファーが飲み物をおごるという風習の起源は、実はスコットランドではなくアメリカであるとする説が有力です。

 その起源とされるのは、1921年にペブルビーチGLの17番ホールで、ジェームズ・B・マーカー氏がホールインワンを達成したエピソードです。ホールインワンの記念に何か特別なことをしたいと考えたマーカー氏に対し、あまりにも完璧な彼のショットを見た同伴者が、クラブハウスの全員に飲み物をおごるべきだと提案しました。このエピソードが、ホールインワンを祝う際に達成者本人が飲み物をおごる習慣の始まりだと伝えられています。

 ただし、この時代のアメリカは禁酒法の時代であり、どのような飲み物でお祝いをしたのか具体的には分かっていません。想像は膨らむばかりです。

飲み物をおごる風習がゴルフの精神を守る

【写真】テンションMAX! 渋野日向子、原英莉花、河本結、安田祐香 ホールインワン達成後の笑顔

画像ギャラリー

2020年樋口久子 三菱電機レディスの初日8番ホールでホールインワンの渋野日向子 写真:Getty Images
2018年アース・モンダミンカップ初日9番ホールでホールインワンの渋野日向子 写真:Getty Images
2021年パナソニックオープンレディース2日目13番ホールでホールインワンの原英莉花 写真:Getty Images
2019年ニッポンハムレディスクラシック初日11番ホールでホールインワンの河本結 写真:Getty Images
2020年樋口久子 三菱電機レディス2日目8番ホールでホールインワンの安田祐香 写真:Getty Images
2022年WMフェニックスオープン3日目16番ホールでホールインワンのサム・ライダー 写真:Getty Images
2018年マスターズのパー3コンテストでホールインワンのトニー・フィナウ 写真:Getty Images
最近で最も印象深かったホールインワンといえば、全米プロ最終日15番で飛び出した“クラブプロの星”マイケル・ブロックのエース 写真:Getty Images
トム・モリス・ジュニアの4連覇により優勝賞品がベルトからカップに代わったエピソード(左)、プレストウィックGCの全英OPでトム・モリス・ジュニアが手にしたチャンピオンベルトとクラレットジャグ(右) 写真:林郁夫
左上スコアカードの左側中程に「1」、右上の「1869」が消されている 写真:林郁夫
1961年、程ヶ谷CC(旧コース)で1ラウンドで2度のホールインワンを達成した鍋島直泰氏のスコアカード 写真:林郁夫
トム・モリス・ジュニアがホールインワンを達成した当時のプレストウィックGCのレイアウト 写真:林郁夫
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