記録上最初のホールインワンは1869年の“ヤング”トム・モリス
ゴルファーならば一度は経験してみたいホールインワン。一撃でボールがカップに吸い込まれ、打った本人のみならずその場に居合わせた全員に歓喜の声が広がる光景は、まさにゴルフならではの熱狂と言えるでしょう。
しかし、その歓喜の直後、打った本人は真っ青に……。ホールインワンを達成したゴルファーはしばしば自腹でお祝いをしなければならないという謎の風習が存在するからです。この風習はどのように始まり、その由来や海外での祝われ方はどのようなものなのでしょうか。
歴史上記録された最初のホールインワンは、約150年前に遡ります。スコットランドのプレストウィックGCで開催された第10回全英オープンゴルフ大会(1869年)でのことです。このホールインワンを達成したのは、優勝者であるトム・モリス・ジュニアで、全長166ヤードの8番ホールでのことでした。当時12ホールだったゴルフ場が18ホールに拡張されレイアウトが変わっているため、同じ8番ホールは現存しません。
当時の全英オープンは毎回プレストウィックGCで行われ、全英オープンは唯一の国際大会(正に“The Open”)でした。この年2度目の優勝を果たした若きトム・モリスは、18歳にしてメジャー大会で初めてのホールインワンをも達成したわけです。その後も勝ち続け、4連覇を達成しました。
史上初の4連覇を果たしたことで、取り決めにより優勝賞品のチャンピオンベルトは永久にモリスの所有物になりました。優勝者に贈呈すべきベルトがなくなってしまったため、全英オープンは一度中止となります。再開された際、新たに優勝賞品となったのが、現在の優勝杯であるお馴染みのクラレットジャグです。
資料を詳しく調査すると、当初、モリスがホールインワンを達成したのは「1868年」と報じられていました。記録の証明となるスコアカードには、手書きの「1869年」の文字が二重線で消され、その上に「1868年」と書き直されています。後の調査により、当日のことを報じた新聞記事の日付が1869年9月23日であったことが明らかになりました。そのため、正確な記録は「1869年」とされています。この事実は、プレストウィックGCのウェブサイトで紹介されています。
ホールインワンパーティーの始まりは1921年ペブルビーチGL
ゴルフの本場スコットランドでは、ホールインワンを達成したゴルファーがボトル1本のスコッチウイスキーを買い、周囲の人々に振る舞うという風習があります。この風習に関して、クラブハウスのバーの入り口にたくさんのショットグラスと一緒に置かれたボトルの写真が時折SNSで見かけられます。
しかし、ホールインワンを達成したゴルファーが飲み物をおごるという風習の起源は、実はスコットランドではなくアメリカであるとする説が有力です。
その起源とされるのは、1921年にペブルビーチGLの17番ホールで、ジェームズ・B・マーカー氏がホールインワンを達成したエピソードです。ホールインワンの記念に何か特別なことをしたいと考えたマーカー氏に対し、あまりにも完璧な彼のショットを見た同伴者が、クラブハウスの全員に飲み物をおごるべきだと提案しました。このエピソードが、ホールインワンを祝う際に達成者本人が飲み物をおごる習慣の始まりだと伝えられています。
ただし、この時代のアメリカは禁酒法の時代であり、どのような飲み物でお祝いをしたのか具体的には分かっていません。想像は膨らむばかりです。