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“かつて”よりも強くなったケプカが手にした“リブゴルフのため”でも“PGAツアーを見返すため”でもない勝利
ブルックス・ケプカが大会3勝目、メジャー5勝目を達成して幕を下ろした今年の全米プロ。かつて3年間でメジャー4勝を挙げ、大舞台での無類の強さを見せた彼だが、ここ数年はヒザの故障に苦しみ、リブゴルフへの移籍により非難を浴びるなど、“終わった選手”と思われていたのも確か。そんなケプカの復活は、故障が癒えたことばかりでなく、内面の成長も垣間見えるものだった。
「ニューヨークのファンの前で勝利を挙げられたことが、とてもうれしい」

今大会では、初日こそ2オーバー、72で出遅れたものの、2日目と3日目は66をマークし、単独首位で最終日を迎えた。
飛距離も正確性も群を抜いていたドライバーと、次々にピンに絡むアイアンショット、そして「何よりパターが冴えている」。完璧に近いゴルフをしていても、小さなミスがボギーやダブルボギーにつながる超難設定のオークヒルズで、ケプカが堂々勝利を挙げたことには大きな意義が見て取れる。
リブゴルフは「競争性が低い」「予選落ちのない3日間54ホールの戦いばかりを行なっていたら、予選カットをクリアして4日間72ホールを戦う戦い方を忘れてしまう」と批判されてきた。
だが、リブゴルフ選手のケプカが優勝し、デシャンボーが4位タイ、キャメロン・スミスが9位タイとなり、トップ10にリブゴルフ選手3名が食い込んだことは、リブゴルフの競争性が決して低くはないことを実証したと言っても過言ではない。
とはいえ、ケプカ自身はリブゴルフの良さや競争性の高さをアピールするために勝利を目指したわけではない。
今大会にはケプカを含めたリブゴルフ選手18名が招待され、実際にプレーしたのは16名だったが、ケプカ以外の他選手がリブゴルフにおけるチームのロゴマークが付されたウエアやキャップを身に着けていたのに対し、ケプカの出で立ちにはナイキのロゴマークだけが妙に目立っていた。
彼がこの全米プロで必死に戦ったワケは、リブゴルフのためではなく、PGAツアーの鼻を明かすためでもない。自分のためであり、自分を支えてくれている人々のため、愛妻ジェナと今年の末に生まれてくる新たな家族のために、再びメジャーを制することを彼は目指した。
そうやって勝利への渇望に温かい愛と謙虚な想いが融合したからこそ、「今のケプカ」は「かつてのケプカ」以上に強くなった。
「信じられない。言葉を失っている。ニューヨークは僕の第2の故郷だ、ニューヨークのファンの前で勝利を挙げられたことが、とてもうれしい」
ケプカの笑顔は、まるで少年の笑顔のようにピュアに輝いていた。そんな彼の変化は、やっぱり「ケプカの成長」と呼んでいい。
文・舩越園子
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。
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